ア~ンパ~ンチ! 広島松山竜平外野手(31)が、4番抜てきに応える痛烈な1発を放った。1点リードの4回、日本ハム大谷の155キロを右翼席へソロ弾。試合前、距離を縮めてのマシン打撃を繰り返し、イメージのまま剛腕を打ち砕いた。風貌からアンパンマンの愛称で親しまれる9年目が、大仕事をやってのけた。

 日本最速165キロの剛腕が帽子のつばを触って顔をしかめる。真っ赤に燃える広島が沸きに沸いたのは1点リードの4回だ。先頭松山が、大谷に切り込む。2ボールからの3球目。内寄りの155キロ速球を振り抜き、右翼席に突き刺した。

 「(狙いは)真っすぐ1本だった。速い球に振り負けないように力強いスイングをできました。最高のバッティングでした」

 絵に描いた剛腕攻略だ。この日は室内練習場で練習した。野手は大谷の剛速球を想定して普段よりも打席を前に設置して打撃マシンと向き合う。試合前「速い球の目慣らしをした。身になればいい」と気合十分。数日前からチームで取り組むメニューが生き「練習はウソをつかない」と納得顔だ。シミュレーション通り、13年6月以来となる大谷からのアーチを再現した。

 自然体な緒方監督の采配もドンピシャに的中する。25年ぶりの日本シリーズ。自身初陣でも奇をてらわない。4番はチーム最多の101打点を挙げたベテラン新井ではなく、松山を起用した。シーズン同様、右投手に左のスラッガー松山を多用するタクトを貫き、大谷の刺客が使命を果たした。大舞台の4番に武者震い。自ら重圧、責任を背負った。

 「いつもは4番目と思っていたけど、今日は4番という気持ちから入っていきました。新井さんばかりに頼ってはダメ。新井さんが出ていないときは僕らが野球をやらないといけない」

 9年目の一大決心だ。丸々とした風貌で「アンパンマン」の異名を取ったが、胸板が厚くなり「キン肉マン」になった。理由がある。「これまでは筋力をつけて硬くなってケガするのが怖かった」と明かすが、キャンプでも故障して出遅れていた。考えを変えた。今季からシーズン中も筋力トレーニングを続け、1度も2軍に降格しなかった。緒方監督は「大きい大きい本塁打で、投手は楽になった」と絶賛する。体、そして心もたくましくなり、大勝負で輝いた。【酒井俊作】