広島が、現役を引退した黒田博樹投手(41)の背番号15を永久欠番にすることを決めた。松田元(はじめ)オーナー(65)が30日、明かした。14年にメジャーの巨額オファーを断って広島に復帰。今季は日米通算200勝を達成し、25年ぶりリーグ優勝に貢献した。功績と、社会現象にもなった男気(おとこぎ)右腕を球史に刻むため、球団では衣笠祥雄氏の「3」、山本浩二氏の「8」に次ぐ3例目の永久欠番となった。

 その男気を忘れない。日本シリーズ敗退から一夜明け、広島球団が黒田に最大限の敬意を表した。黒田が背負い続けてきた「15番」を永久欠番とすることを決めた。松田オーナーが「成績だけではない。一般社会にも影響を及ぼす価値観は、後世にも残すべきだと。男気の部分で、価値観を覆してくれた」と説明した。広島では衣笠祥雄氏の3番、山本浩二氏の8番に続く永久欠番となる。

 日米通算203勝をマークした成績だけでない。14年に20億円とも言われるメジャーのオファーを断り、推定年俸4億円で広島に復帰。金額にとらわれない価値観は、広島にとって特別だった。被爆地から立ち上がり、12球団で唯一、親会社をもたない。地域密着で、何よりもつながりや、ぬくもりを大切にしてきた。軽視されがちな温かさを真剣に見つめた黒田の決断は、大きな話題を集めた。

 思い返せば男気の連続だった。06年にFA権を取得し、移籍と残留で揺れながらもファンの熱意に感銘を受けてチームにとどまった。翌年に米大リーグ挑戦を決断した際にも「日本に戻るならカープ」と言い切った。メジャー7年間で79勝をマーク。黒田の帰りを待つ球団も、15番を空位にしたまま、7年間待ち続けた。復帰初年の昨季は11勝をマーク。オフには引退で揺らいだが、後輩の声にも押されて、現役続行を決意していた。

 今季はボロボロの体にムチを打ってマウンドに立ち続けた。「何より男気と、そして優勝に導いてくれた。投げるということに対する考え方。プライドを感じさせてくれた」と松田オーナー。最後までマウンドを守るという気概は、後輩に与える影響も大きかった。

 永遠の背番号15は、11月5日の優勝パレードで、見納めになる。黒田は前日の敗戦後「参加させてもらいたいなと思いますし、そこでファンの人にもう1回、自分のユニホーム姿を見てもらえればいいかなと思います」と参加を明言していた。広島の誇り「背番号15」が、伝説となる。【池本泰尚】