プレーバック日刊スポーツ! 過去の11月13日付紙面を振り返ります。2011年の1面(東京版)は巨人渡辺恒雄球団会長と清武英利GMによるお家騒動でした。

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 静かなる懲罰の始まりだ。巨人渡辺恒雄球団会長(85)が12日、前日11日の清武英利GM(61)による「渡辺批判」声明文に対する談話を発表した。「清武声明」には事実誤認、表現の不当、許されざる越権行為及び名誉毀損(きそん)が含まれると反発。清武GMに謝罪を求めた。清武GMの反省次第で、現時点では処分を求めないなどと、談話はあくまで冷静さを保っているが、かえってそれが渡辺氏の怒りの大きさをにじませた。この談話に対し、清武GMは12日深夜に再反論した。

 静かなる反論だった。午後7時過ぎ、読売新聞東京本社広報部から、報道各社に渡辺会長の談話がファクスで送られた。冒頭で、前日の「清武声明」を「事実誤認、表現の不当、許されざる越権行為及び私に対する名誉毀損(きそん)が多々ある」と一刀両断。反省と翻意を求められたが、「清武君に謝罪を求めます」と、逆に要求した。

 「不当な鶴の一声で、プロ野球を私物化するような行為」と、清武GMが批判した、桃井オーナーのオーナー職の?奪が「コンプライアンスに反する行為」という指摘についても「まことに非常識で悪質なデマゴギー」とバッサリ。さらに「GMは適任でなかったと思いました」と結論付け「『清武補強』のほとんどは失敗しました」と、ソフト口調ながら「清武声明」に1つ1つ反論した。

 清武GMが暴露した「江川卓ヘッドコーチ招聘(しょうへい)」については、詳細を記した。同プランは、もともと「最近、会談しているとき」に原監督から提案があったことを明かした。ただ、岡崎ヘッドコーチに留意し「江川助監督」として迎え入れる計画だったことも披露した。助監督となれば、次期監督候補という位置付け。原-渡辺会談でもそうした内容の話し合いもあったと想像できる。だが、「清武声明」で公表されたため「直ちに実現することは困難になってしまいました」と、清武GMの“自爆テロ”に阻止されたことを示唆した。

 助監督プランを公開した意味は大きい。前夜、キャンプ地の宮崎で原監督は、4日の会長報告の際に江川氏の話はあったかという質問に「まったくありません」と、個人名を出すことで江川氏に迷惑をかけるとの配慮から完全否定した。そうした中、同会長があえて詳細を明らかにしたのは、今後の清武GMの再反撃に備える意味もありそうだ。

 ただ、10月20日に球団フロントからコーチ人事を示されたことを「事実」としつつ「CSで惨敗した以上」見直しすることは「当然のこと」という部分には疑問も残る。前日、桃井オーナーも会見で今季のCSを「大惨敗」と表現し「会長としては状況が変わった、見直しが必要だという判断だったんだろう」と、渡辺氏を擁護した。だが、渡辺氏はシーズン中、CS進出すれば及第と公言。CSも鬼門の神宮でヤクルトに1勝1敗から惜敗と、必ずしも惨敗ではない。「惨敗」の2文字には鶴の一声を正当化し、清武GM攻撃にタッグを組んでいる側面を感じさせる。

 今後の清武GMの処遇に関し「本人の反省次第であり、現時点ではただちに処分を求めるつもりはありません」と書いて談話を締めくくった。夜には白石興二郎読売新聞グループ本社代表取締役社長、桃井オーナーと都内で会食。ただし、報道陣の取材できない施設での会食で、直接は沈黙を貫いた。談話の文書も、徹頭徹尾、淡々とした丁寧な文言。その裏側に、渡辺会長の強い怒りと、清武GMの身に待つ“懲罰”の壮絶さが垣間見られる。

※記録と表記は当時のもの