WBC球への戸惑いの声は小さくなり、侍投手陣がそっと刀に手を掛けた。来年3月開催の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一奪還を目指す日本代表が10日から東京ドームでメキシコ、オランダとの強化試合に臨む。チームは9日、東京ドームで最終調整した。

 今日10日のメキシコ戦に先発する武田翔太投手(23)はWBC球について、「感触はよかったですし、心配はしていません」ときっぱり。タテに割れるカーブが武器で、ボールが違えば変化や感覚の違いは多少あるものの、気にしていない様子。むしろ初戦を任されることに「うれしい。いい試合に出来るように。低めをついていきたい」と気合が入った。

 昨年の国際大会「プレミア12」はミズノ社製の球で行われたが、今回はWBC公認球を使用する。対応力が求められる。第2先発の千賀も「僕はそんなに感じないです。(握りも)そのままです。とにかくストライクが入ってくれれば」。“おばけフォーク”と呼ばれる落差の大きい決め球も、ボールの影響は受けにくいと言う。「(メキシコ打線は)分からないので、とにかく内容は考えずに投げたい」と拳を握った。

 選手の見極めが最終段階に入り、チームを挙げた工夫もある。ロジンバッグは、大きく少しずつ粉が出る米国仕様のものと、NPBで使用する粉がふんだんに出る2つのタイプを用意。権藤投手コーチは「過去には対応出来なかった投手もいる。何とか対応していかないとね。ボールはタッチが全然違うから」と説明。終盤の継投策の確立はWBCへ向けた課題の1つ。中継ぎ陣もイニング途中の投手リレーは基本的になく、感触の確認と見極めに時間を使うことになりそうだ。

 マウンドも本番仕様となる。東京ドームのマウンドの土が、従来の日本産からカナダ産の赤い粘土質のものに入れ替えられた。日本より硬いメジャーリーグ仕様だ。WBCを見据えて、投手陣の足元の対応力も見極める。この日の公式練習開始前には、武田、大谷、藤浪ら全投手が権藤投手コーチとともに感触を確かめた。貴重な強化試合。侍が対応力を見せる。【池本泰尚】