広島丸佳浩外野手(27)がシーズン30発を目標に、宮崎・日南の秋季キャンプで打撃矯正に取り組んでいる。昨年の打撃改造を経て、今季は20本塁打、90打点で自己最多を記録。さらに本塁打を量産するために、バットを振って、振って、振りまくる。30本塁打をクリアすれば、自己最多29盗塁を誇る丸にはトリプルスリーの偉業も見えてくる。

 進化のためには、立ち止まっていられない。秋季キャンプでは一定の自主性に任せられている丸は、全体練習後、自主的にバットを持ち、ロングティー打撃を繰り返した。今季広島打線をけん引した躍動的なフォームはない。テークバックまでの動きを小さくし、大きく上げていた右足の高さも低い。トスを上げる迎打撃コーチにフォームを確認し、石井打撃コーチから身ぶり手ぶりで指導を受けた。日本シリーズまで全試合に出続けた主軸は、練習量を落とさずバットを振り込んでいる。

 「やらないといけないことはある。不器用なので振っていくしかない。それはこれまでと変わらない」

 昨秋からのフォーム大改造が今季、実った。全143試合で3番を務め、打率2割9分1厘。20本塁打と90打点は自己最多だった。特に20発という大台を突破した長打力は新たな発見だった。東出打撃コーチは「バットに乗せて打てる技術がある。30本もいけるんじゃないか」と期待する。丸の手にも手応えは残る。「自分の中でも(可能性は)あると感じられた」。1年前まで「無理」と言っていた数字も、今では目標の1つとなった。

 打撃修正は大改造ではない。石井打撃コーチは「タイミングの取り方を変えただけ。もっとシンプルに、動きを小さくしているだけ」と説明。無駄を省くことで調子の安定、確率の向上を目指す。まだまだ試行錯誤の段階だ。

 自主性に任せられる今キャンプも「言われなくてもやるタイプですから」と、他の選手に劣らぬ練習量を自ら課す。昨秋と同じように振り込み、覚えていくつもり。13年には29盗塁でタイトルを獲得した脚力は、今季も23盗塁と健在。14年には打率3割1分を残した。それだけに、新打撃が完成すれば、球団では00年金本以来となるトリプルスリーも夢ではなくなる。【前原淳】