侍ジャパンへ「3つの提言」を送る。メキシコ、オランダとの強化試合を終え、いよいよ来年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)に向かう。小久保裕紀監督(45)が「勝ちにこだわる」と臨んだ4連戦は3勝1敗も、相手に主導権を渡す苦しい展開が続いた。昨年のプレミア12準決勝、韓国戦の逆転負けから1年。強い日本を印象づけて本番へ-の思惑は崩れた。今回の強化合宿、強化試合から浮かび上がってきたポイントは「大谷の起用法」「ベンチワーク」「メンバー編成」の3点。課題を克服すれば、世界一の奪還が見えてくる。

<提言3:メンバー編成>

 今回の強化試合は何を目的に行われたのか。選手選考のためか。用兵、戦略、戦術テストのためか。ウエートは前者にあった。

 先発候補が軒並み失点し、追いかける試合が続いた。ボールへの対応など、選考テストはできたのかも知れない。しかし、本番前ラストとなる外国相手の試合で、主導権を握った試合運びをテストできないのでは本末転倒。国内の見極めをほぼ終え、メジャー選手からの吉報を待ち受けるくらいに、メンバーの精度を高めておくべきだった。

 小久保監督の就任から3年1カ月が過ぎた。監督の目で選手を見極める時間が十二分にあったのが、過去との大きな違いだ。ここまで招集の機会が6回あり、73選手が招集されてきた。すべて招集されている選手は中田だけ。強化試合で4番を打ったことも合点がいく。数多く選ばれた坂本、山田、筒香ら、軸となるメンバーも決まった。

 ただ、陣容を固め、戦い方の方針を定め、細かな戦術を確認する段階には、まだ至っていない。メキシコ、オランダ戦から得た事実は、世界のライバルは甘くないということ。第2グループの先発は? 勝利の方程式は? ここ一番の代打、代走は? 枝葉の細部まで徹底的にこだわってこそ、相手チームの色に対応できる。

 小久保監督には、かわいそうな一面もある。メンバー招集の環境整備は、もう次回大会への課題になるのかも知れないが、この期に及んで、呼びたい選手を呼べなかった。シーズン後であり、状態面の理由は仕方がない。しかし、球団から派遣を拒否された選手、純粋に辞退した選手もいたという。代表を常設化した意義は“挙国体制”にあるはず。メンバーを決める最後の詰めでは選ぶ側と選ばれる側が団結し、一丸で世界一奪還へ挑むべきだ。【宮下敬至】