虎の糸井、誕生! オリックスから国内FA権を行使した糸井嘉男外野手(35)が阪神移籍を決断したことが20日、分かった。今日21日にも両球団に意思を伝え、発表される。阪神金本監督が「初めての恋人」とまで評し、交渉に出馬したスター選手がタテジマに加入。12年ぶりV奪回の使者として期待が高まる。

 阪神糸井が、誕生する。11月1日に国内FA権の行使を表明し、他球団との交渉解禁日だった同11日に阪神と交渉。全力で引き留めにかかったオリックス残留か、阪神移籍かで悩みに悩み抜いた結果、新天地で挑戦する判断を下したことが明らかになった。

 阪神と交渉して以降、糸井サイドはかたくなに沈黙を貫いてきた。この日も決断の声明が出されることはなかった。阪神側の窓口である高野球団本部長も所用で甲子園を訪れ、「まだ返事はもらっていません」と説明するにとどめた。ただ、複数の阪神、オリックス関係者の話を総合すると、糸井はついに虎移籍を決断した模様だ。今日21日にも両球団に意思を伝え、発表するとみられる。

 猛虎からすれば、不退転の決意で臨んだ誠意ある交渉が実った形だ。オフの早い段階から糸井をFA補強の目玉選手と位置づけ、水面下で調査してきた。11月10日午後3時にFA宣言選手が公示されると、3時1分に電話で速攻のアポ取り。交渉解禁日の11日に金本監督同席のもと初交渉し、指揮官は「初めての恋人や」と熱い言葉も送った。

 4年総額18億円を提示したオリックスと同等の大型契約を用意。阪神移籍が秒読み段階となってからも、慎重に水面下で連絡を取り続けてきた。非公開の交渉課程では、現在西岡がつけている背番号7の譲渡も提案している模様。さらに金本監督が無期限で返答を待つ姿勢を明かすなど、糸井の胸中を最大限気遣った交渉を続け、待ちに待った朗報を聞くことになる。

 金本監督はすでに「攻める2番、ゲッツーのない2番が理想」と、超攻撃型の2番糸井構想についてイメージを膨らませている。ポジションは中堅か右翼か、まだチーム事情で流動的な情勢だが、いずれにせよ中心選手となることは間違いない。今季、35歳で143試合に出場し打率3割6厘、17本塁打、70打点、そして53盗塁を記録したスター選手。バッテリー以外のFA選手獲得は、07年オフの新井貴浩以来、9年ぶりとなる。「挑む」のスローガンを掲げる金本阪神2年目。V奪回のキーマンがタテジマに袖を通す。

 ◆糸井嘉男(いとい・よしお)1981年(昭56)7月31日、京都府生まれ。宮津-近大を経て、03年ドラフト自由枠で日本ハムに投手として入団。1軍戦登板がないまま、06年4月に外野手にコンバートされた。転向4年目の09年にレギュラーを獲得。圧倒的な身体能力を生かしたプレーで、パ・リーグを代表する選手となる。13年1月、オリックス3人(木佐貫、大引、赤田)と日本ハム2人(糸井、八木)の大型トレードで移籍。15年には主将。187センチ、88キロ、右投げ左打ち。

<糸井FA経過>

 ◆9月13日 糸井が国内FA権(今年3月取得)行使を検討していることが判明。阪神が調査していることも明らかに。

 ◆10月21日 残留を熱望するオリックス側が、糸井に4年最大18億円の契約を示していることが判明。

 ◆同24日 糸井がFA宣言した場合、阪神が獲得に動くことが判明。

 ◆11月1日 糸井がFA権の行使をオリックスに通知。「夜も眠れないぐらい考えて」と熟考の末。7日にオリックス球団事務所を訪れて、申請書類を提出。

 ◆同9日 阪神が、糸井が長年つけてきた背番号「7」提示を検討していることが判明。

 ◆同11日 交渉が解禁となり、阪神側は金本監督同席のもと糸井と初交渉。金本監督は「初めての恋人や」と語り、糸井は「熱い言葉をもらいました」と喜んだ。