「奇跡のバックホーム」から20年-。あの夏の記憶が多くの人の脳裏によみがえった。熊本・藤崎台球場で26日、1996年夏の甲子園決勝で名勝負を演じた松山商(愛媛)と熊本工のOBらによる試合が行われた。熊本地震の復興支援イベントとして行われ、約500人の観客も再戦を喜んだ。記念Tシャツやタオルの売り上げの一部は義援金として寄付される。

 OB戦終了後、サプライズで再現されたのは、延長10回裏1死満塁のあの懐かしのシーン。ベンチから右翼に入り、飛球をキャッチした松山商OBの矢野勝嗣さん(38=愛媛朝日テレビ)は、当時よりもライナー性のボールでこん身のバックホーム。だが、三塁走者の熊本工OB星子崇さん(38=バー「たっちあっぷ」経営)の足が早く、判定はセーフ。20年前とは違う結果に、矢野さんは「打球は当時と似ていたけど、甲子園と違って浜風がなかった分、セーフでしたね」と苦笑いした。

 9-8で熊本工が勝ったOB戦も、20年前の決勝さながらの真剣勝負。8回に決勝打を放った星子さんは「あの試合は僕にとって避けては通れない出来事。あの時は悔しかったけど、あの時、僕がセーフだったらこの再現はなかった。最高の試合でした。タッチアップがセーフでよかった。松山商が花を持たせてくれました」と喜んだ。

 当初は10月に開催予定だったが、雨で中止となり、ようやく実現した一戦。夏の甲子園が100回大会を迎える2年後には、松山で再びOB戦を行う予定だ。試合後は両軍交えての親睦会を開き、思い出話に花を咲かせた。【福岡吉央】

 ◆奇跡のバックホーム 96年夏の甲子園決勝(8月21日)は松山商(愛媛)と熊本工の対決。3-2で松山商がリードし、9回裏を迎えた。2死走者なしの瀬戸際で、熊本工の沢村が同点弾。さらに熊本工は10回1死満塁とサヨナラ機で、3番本多が右翼に飛球。だが、松山商の右翼手・矢野が“ストライク”の好返球で、三塁走者の星子をアウトにした。ピンチを防いだ松山商は11回表に3点を勝ち越し、27年ぶり5度目の優勝を果たした。