【カロリナ(米自治領プエルトリコ)13日(日本時間14日)=四竈衛】右肩手術からの完全復活を目指すソフトバンク松坂大輔投手(36)が、ウインターリーグでカグアス戦に先発し、5回3安打1失点2四球3奪三振と、上々の内容だった。今リーグ2度目の登板に臨み、ノーワインドアップをテストするなど、来季へ向けた「変化」の準備を着々と進行中。プロ19年目を迎えるベテランが「オフ返上」で調整を続ける。

 カリブ地方特有のスコールに見舞われても、松坂の集中力は途切れなかった。5回表、突然、激しい雨に見舞われた。制球を重視したベテランは、イニングの頭からセットポジションに変え、簡単に2死を奪った。ところが、雨脚がさらに強まり、ストレートの四球。審判団は中断を宣告した。通常であれば、お役御免だが、松坂の心は続投だった。「投げるつもりでした」。雨上がりの10分後、再びマウンドに立つと、最後は左打者に対し、内角からのツーシームで空振り三振。5回77球。4回の犠飛による失点だけでしのいだ。

 初先発した3日は、水分を含んだ粘土質のマウンドにスパイクの歯が埋まり、バランスを崩した結果、同じカグアスを相手に4回2失点、6四球と乱れた。中9日で迎えたこの日は、ノーワインドアップをテーマに掲げた。「この期間中は試してみようと。変える時に中途半端にならないように、何かを変えようとするときは思い切りが必要だと思うので、中途半端な形にならないように、うまく変われるきっかけをつかめたらいいなと思います」。来季、試合で投げるかどうかは決めていない。ただ、大胆に「変化」することを恐れない姿勢こそ、松坂の決意の表れだった。

 今リーグで取り組んでいるツーシームにも、徐々に手応えを感じ始めた。左打者のフロントドアは横へのシュート、外角にはやや沈むシンカーをイメージし、精度を磨いてきた。「理想は速くて動く球。(速球と)近い球速でうまく扱えるようになればいいです」。現地スカウトの計測によると、最速は90マイル(約145キロ)。過去2年間、満足に投げられなかったことからすれば、この時期としては大きな進歩といえる。

 今月下旬まで滞在し、あと2試合に先発する見込みだ。「肩の状態を保つことができれば、しっかり投げ続けられるんじゃないかと。来年、しっかり笑えるようにしたいですね」。再起へ向け、変化を求める松坂の表情と言葉に、少しずつ力強さが戻ってきた。