プロ野球人生を白星でスタートさせた。ロッテのドラフト1位、佐々木千隼投手(22)が日本ハム3回戦(ZOZOマリン)でプロ初登板初先発。毎回の6四球と苦しみながらも、走者を背負ってから踏ん張った。秒速10メートル以上の強い風も利用しながら5回3安打1失点で堂々の勝利投手になった。昨秋ドラフトで、外れ1位では史上最多5球団が競合。注目ルーキーが最初のマウンドで結果を出した。

 最後のヤマは自力で乗り越えた。1点リードの5回。佐々木は無死二塁から「1点もやれない」と、西川、大谷を空振り三振。2死一、二塁となり、中田を迎えた。「打席に立つだけですごいオーラがあった」が引かない。2球で追い込み、3球目のスライダーを振らせた。空振り三振を3つそろえ、力強く拳を握った。

 本拠地は過酷だった。最大で秒速13メートルの強風は「予定していた以上」。バランスを崩しかけ、序盤は直球が入らない。助け舟は女房役がくれた。田村の助言で、4回からは走者がいなくてもセットで投げた。「(風で)変化球がよく曲がる。田村が有効な球を選んでくれた」。ストライクが入るカーブ、スライダーの割合を増やし、ととのえた。

 悩んで、悩んで、ここまで来た。キャンプ初日は衝撃だった。ブルペンに1歩踏み入れた途端、いっせいに視線を感じた。だが、直球がシュートする。「せっかく1位で取ってくれたのに。申し訳なかった」。涌井、石川らそうそうたるメンバーにも「やっていけるのかな」。実戦は抑えても内容が悪い。「思うような球がいかない」と焦った。

 考えるしかなかった。宿舎で1人、シャドーをした。ベッドに就いても、思いを巡らした。和らげてくれたのは、周りの人たちだ。コーチはもちろん、先輩も気遣ってくれた。オープン戦最後の3月26日。練習中に田中靖に声をかけられた。「1年目のこの時期に悩めるのは幸せだぞ。その悩みがなくなったら、成長したってことなんだから」。試合後、先輩は2軍行きを告げられた。託された言葉に、少し心が軽くなった。

 口癖は「僕は下手くそ」。本心だ。「だから練習するしかないんです」。この日も6四球と安定感を欠いたが、打線の援護、バックの守りで切り抜けた。

 佐々木 1つ勝つのは大変なことだと感じました。これから、もっともっと成長していければいい。

 両親に贈る記念球をしまい、真っすぐ前を向いて言った。【古川真弥】