巨人高橋由伸監督(42)がキムタクさんに縁深い広島で勝利を届けた。ベンチから不動でエースを見つめ続けた。菅野には前日に「相手を崩す投球を。破壊力がある投手だと思うので」と要求したが、完璧な回答を受け取った。「本人も“圧倒”とよく言うが、その通りの投球をしてくれた」。指揮官と大黒柱のキャッチボールが心地よかった。

 午前9時。広島市内にある霊園に足を運んだ。高台からは市街地と瀬戸内海が一望できる。絶景の地に眠るのは戦友だった元内野守備走塁コーチの木村拓也さん(享年37)。10年にくも膜下出血で急逝した。

 「(お墓参りは)去年の5月以来かな。久々に来たね」。お墓に水をかけ、清めた。4月7日が命日。故人をしのび、花が多く生けられていた。「この時期はやっぱり多くの人が来るんだね」。歳月が過ぎても人々の心に刻まれている。少し、うれしそうに来訪者の多さを実感した。

 まだ色鮮やかな数本の花を残し、茎が茶色がかったものを丁寧に選んで持参した花束と入れ替えた。落ちた花びらを1つ残らず掃き、ホームベースをかたどった足元に座った。静かに目を閉じ、手を合わせた。恒例の儀式を終え、静かに墓地を後にした。

 昨年5月23日に監督就任後、初めてお墓参りをした。だが24日からの広島戦は3連敗を喫した。節目だから勝つという意識を持つほど、勝負の世界は甘くない。だが特別な感情も隠せずにはいる。今年の命日は阪神戦に勝利し「僕も一緒にグラウンドに立った仲間だったし、忘れられない日でもある。そういう日に勝ち、選手もいい試合をしたのは良かった」と少し感傷に浸った。

 今年はすぐに勝利を手向けることができた。「(菅野)智之の力で前回3つ負けた勢いを少し変えてくれた」。高橋監督はキムタクさんと同様に、菅野という頼もしい戦友と志をともにする。【広重竜太郎】