古巣封じを見届けて、スカッと黄金週間を終わろう! 楽天岸孝之投手(32)が、今日7日の西武戦(メットライフドーム)に先発する。昨季まで君臨したマウンドに、クリムゾンレッドのユニホームをまとって戻ってくる。登板前日の6日は落ち着いた様子で調整。「自分の投球から流れを持ってこられたら」と意気込みを語った。

 所沢のマウンドに、鶴のごとく美しいワインドアップが舞い戻ってくる。昨季までの本拠地で登板前の調整を終えた岸は、ビジターの一塁側ロッカー室に引き揚げる際、足を止めて意気込みを語った。10年間も守り抜いてきたマウンドで、ぶざまな格好を見せるわけにはいかない。「いい時も悪い時も。思い出は相当、ある。何とも言えない」と一瞬だけ感傷に浸り、すぐにスイッチを切り替えた。

 「多少の意識はあるが、いつも通りやれたらいい。西武はウルフ。テンポがいい。負けないように投げて、自分の投球で流れを持ってこれたらいい。そんな気持ちで臨みたい」

 投げ合うウルフは今季4勝負けなし、防御率1・74。昨季途中の加入以来、無傷8連勝の助っ人だ。完勝ペースの5回終了時、両者の予告先発がアナウンスされたメットライフドームに微妙な空気が充満した。応援がブーイングに変わろうと動じず、こんな相手との投手戦を制するために楽天に来た。

 ライオンズ打線の怖さは誰よりも知っている。「ホームランを打てるバッターがたくさんいる。ランナーをためて1発、が一番良くない。大胆に、でも慎重に」と言ってから「(自軍の)打線に言うことはない。自分のピッチングをして、どれだけいい流れを作れるか」と繰り返した。糸を引く直球VSフルスイング。攻防だけに集中する。

 西武もまた、岸のことをよく知っている。メットライフドームには、選手のプレーを数値で分析するレーダー「トラックマン」が設置されている。球界のトレンドである機器は、昨季まで在籍した岸の客観的なデータをあぶり出している。昨季は岸と同僚だった西武の橋上野手総合コーチは、エースの流出直後に「直球も変化球も、岸のボールはスピン量が多い。球速よりスピードを感じるし、カーブも曲がりが大きい」と説明し、その先の言葉をのんだ。古巣とのせめぎ合いを制して大型連休を締めくくり、胸を張って仙台へ戻る。【宮下敬至】