巨人の本塁打攻勢を食らって、阪神の連勝は6でストップした。3年ぶりの2桁貯金もお預けとなったが、6日広島戦の9点差逆転を思い出させる試合展開で虎党に夢を見させた。7点リードされた6回に打者一巡の猛攻。押し出し四球と、高山俊外野手(24)北條史也内野手(22)の連続適時打で追い上げ、9回には中谷将大外野手(24)のソロ本塁打が飛び出して2点差まで詰め寄った。この粘りは必ずや今後に生きるはずだ。

 前例があるからジャブが効く。ドキドキさせてくれる。3点を追う9回2死。5番中谷がライナーを左翼席に突き刺すと、あと1アウトで試合終了とは思えぬザワザワ感が、球場全体に漂った。「まだ分からない点差だったので、つなげようという気持ちでした」。中谷の言葉に猛虎の勢い、雰囲気が凝縮されていた。

 あの、9点差大逆転を成し遂げたチーム-。6日広島戦の歴史的事実が相手投手の動揺を誘い、虎戦士に勇気をもたらす。7点差をつけられた6回、「諦め」の2文字はなかった。2安打2四球で1点を奪い、なおも2死満塁。1番高山が右前適時打を決めて1点追加。再び2死満塁で2番北條は左中間フェンス直撃の2点二塁打を放った。

 高山は冷静な言葉にプロのプライドをにじませた。「点差に限らず試合終了まで勝つためにやるのが仕事なので」。北條は本気で逆転に懸けたナインの心意気を包み隠さず表現した。「まずは1点、2点ということをベンチで言っていた。2、3点取れば相手も焦る。1点ずつ積み重ねていこう、と」。5回終了時点で2-9だったスコアは最後7-9まで変化した。

 試合開始7時間前の東京ドーム。静寂に包まれた空気を切り裂く打撃音が響き渡っていた。今季も恒例の早出練習だ。午前11時、中谷、糸原、高山、北條が素振りを開始。10スイング続ける連続ティー打撃の回数は首脳陣の発案で格差がつけられた。中谷と北條は通常通り15回。前夜2安打した高山は回数を減らして12回。3打数無安打だった糸原は20回。4人は夜、ナイターで結果を出した。地道な努力があれば、勢いは一過性で終わらない。

 連勝は6でストップ。だが金本監督は試合後、納得していた。「もう1回、本気でひっくり返そうという雰囲気を感じた。その気持ちを忘れないように。気持ちをずっと持続していけば、何か違う、今までにない新しいものが見えてくると思う」。猛虎打線の反発力を再確認させた事実に、意味がある。【佐井陽介】