インファイト上等! ヤクルトが内角の攻防を制して広島を沈め、神宮で今季初勝利を決めた。前日の試合でカープバッテリーに徹底して内側を掘り起こされ、頭部死球の川端が脳振とうの特別措置により登録を外れた。青木も肩口に1発食らい、上品な燕たちの闘争心に火が付いた。

 試合前。野手の打撃練習を見守る宮本ヘッドコーチが、意を決して投手陣の調整する神宮外苑へ駆けた。ピッチャーたちを輪にしてギュッと集め「貸しがある! 遠慮せずいけ!」とハッパをかけた。ブキャナンが「そうだ!」と呼応し結束を高めると、まずは来日初先発のハフがチームの総意を忠実に遂行した。

 1回2死、広島丸に140キロ台後半の直球を続けた。146キロで与死球も動じない。続くエルドレッドにも7球すべてを胸元へ。四球での一、二塁は「攻める」の意思表示だった。5回まで無安打に抑え主導権を握ると、野手陣も川端の敵討ちに襲いかかった。

 代わって三塁スタメンの西浦が放った2適時打は、内角に食い付いたもの。6回、決勝打の起点となった代打山崎の三塁打も、内角高めに覆いかぶさって一塁線を破ったもの。8回、申告敬遠直後の初球に青木が放ったダメ押し打は、なめるな…の表れ。東京音頭の傘が激しく揺れた。

 内角を攻められても攻め返さず、広島には昨季10個もの貯金を献上した。96敗、44ゲーム差で黙っていては、勝負の世界に身は置けない。小川監督は「石井琢朗が常に声を出し、選手が応えている。ベンチの雰囲気はいい。行動、意識となって表れるか」と静かなる迫力。おおいなる“報復”が始まる。【宮下敬至】