阪神の“1日2勝”はならなかった。敵地マツダスタジアムの広島戦は2日続けての雨中戦となり、前夜は午前0時3分に勝利の瞬間を迎えたが、この日は痛恨の逆転負け。最下位脱出とはいかず、3位巨人とも1・5ゲーム差に後退した。今季広島戦のカード負け越しも決まった。代打の切り札、原口も戦線離脱し、過密日程の虎が、ますます窮地に立たされた。

雨に打たれ続けた体が、より重たく感じる。2夜連続となった雨中の激闘に敗れた直後。金本監督の表情には、さすがに疲労の色がにじんでいた。

「まあ、四球2つのエラーだからね。まあ1点差にしてはね、ちょっとしんどかったかなと思いますね」

渋い表情で振り返ったのは1点リードの7回裏だ。強い雨でマウンドの土がぬかるむ中、2番手能見が2死から2者連続四球。2個の暴投も絡み、一、三塁で降板した。3番手桑原は4番鈴木に同点打を献上。なおも2死一、二塁、ここで5番松山の遊撃へのゴロを植田が後逸した。雨の影響で不規則に転がったとはいえ痛恨の適時失策。指揮官も「同じエラーでも、後ろにそらしてはいけない」と指摘せざるを得ないミスだった。

前夜の試合終了時間は日付が変わった0時3分。試合開始時間が1時間9分も遅れ、2度の中断時間の合計は1時間14分にも及んだ。4時間54分ゲームをモノにした翌日、再び雨に苦しんだ。3点リードを守りきれず、8回には今季限りで現役を引退する新井の適時三塁打などでダメ押しの3点を追加された。

この日も7回裏終了後、9回表終了後と2度、計31分間の中断があり、3時間45分ゲームの終了時間は午後10時17分。阪神が1日に2勝すれば、ダブルヘッダーで2勝した81年10月2日中日戦(ナゴヤ)以来の快挙だったが、逆転負けで徒労感だけが残った。

試合前には、代打の切り札だった原口の左手小指骨折も発表されていた。左肩亜脱臼の北條に続く離脱。右太ももを痛めている福留もまだスタメン復帰できていない。これで3位巨人とのゲーム差は1・5。それでも明るい材料がないわけではない。

蓄積疲労を抱えて12日に出場選手登録を抹消されていたメッセンジャーが、懸命に来週中の1軍復帰先発を目指していることが判明。順調に疲労が回復すれば、との条件付きになるが、大黒柱が戦列復帰すればチーム全体が勇気づけられることだけは間違いない。

金本監督は会見の終盤、「みんなでカバーしていくしかない。また明日、一丸になって勝ちにいかないと」と力を込めた。残り17試合。最後は総力戦しかない。【佐井陽介】