新型コロナウイルスの猛威がプロ野球の開幕を異常事態の「白紙」に追い込んだ。12球団代表者会議を3日、都内で開き、4月24日の開幕を再々延期することを決めた。

感染状況が悪化を続け、先行きが見通せないことから新たな開幕日は設定せず、4月下旬から5月上旬にかけて船出のタイミングを模索する。最短でも5月26日以降とみられ、公式戦の143試合実施は絶望的で交流戦、CSの中止も本格的に検討される流れだ。苦渋の無観客試合も選択肢に入れざるを得ない苦境だ。

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3月20日に始まりを告げるはずだった20年シーズン。延期を繰り返す事態にも4月10日以降、24日と目安は設けてきた。だが設定すらできない状況と捉えた。16日に政府の専門家会議、17日に第6回の対策連絡会議を予定。その時の感染状況を鑑みて、4月下旬から5月上旬に開幕日を模索する。「4月下旬か5月上旬に決めるというメッセージは、選手から見ると、やるにしても、このくらい先というのは分かると思う。ぐるぐる延ばすより、状況をしっかり見極めて言った方がいい」と説明した。

開幕は最短でも5月26日とみられ、6月に突入することもありえる。5月中旬までは可能だった143試合とポストシーズンの全日程消化は絶望的だ。「限りなくシーズンの価値を損なわないようにしたい」。同リーグ同士の試合を優先し、交流戦、CSの中止が今後、本格的に協議される。かつて130試合制の時代も長かったが、130試合を割ることになると1953年のパ・リーグの120試合以来。寂しい試合数になる。

さらなる苦境も覚悟しなければならない。これまで5割以下などの入場制限について議論を交わしていたが、専門家からはリスクも踏まえた上で無観客試合への意見も出た。以前は「最後の最後」と表現していた斉藤コミッショナーも「こういう状況ですから、否定できない。無観客も考慮の1つ」と踏み込んだ。NPB井原事務局長も12球団の見解として「今日の時点で無観客もやむを得ない」と示した。

もはや様式にこだわれる状況でもない。かつてない閉塞(へいそく)感が漂う世の中に、どんな形であれ、球音がこだまする日を耐えて待つしかない。【広重竜太郎】

○…特別ルールの作成に入る。週明けの6日に両リーグ理事会と実行委員会を予定。感染疑いが出た場合の登録抹消の扱いや、シーズン短縮でのFA日数の取り扱いなどが議論されるとみられる。井原事務局長は「試合数も少なくなるとしたら、どういう特例を考えなきゃいけないかという洗い出しをする」と説明した。

<プロ野球新型コロナウイルスを巡る経過>

◆2月21日 日本野球機構(NPB)と12球団が感染防止のために共通の対策を実施することを確認。

◆25日 巨人が29日と3月1日に主催するヤクルトとのオープン戦を無観客で実施すると発表。

◆26日 臨時の12球団代表者会議でオープン戦の残り全72試合を無観客で実施すると決定。

◆3月3日 Jリーグと連携して「新型コロナウイルス対策連絡会議」を設置し、第1回会合を開いた。

◆9日 第2回対策連絡会議で開幕延期の助言を受け、臨時の12球団代表者会議で延期を決定。

◆12日 開幕を4月10日以降とすることを発表。

◆20日 当初開幕予定日を迎え、無観客の練習試合が4試合行われた。

◆23日 12球団代表者会議で4月24日の開幕を目指すことを決定。1軍の練習試合はいったん白紙に。

◆26日 阪神藤浪がPCR検査を受け、NPB球団所属選手初の陽性判定。

◆27日 阪神伊藤隼、長坂も新型コロナウイルス感染が判明。

◆30日 イースタン・リーグとウエスタン・リーグの両リーグ運営委員会が31日から4月6日までのファーム練習試合中止を決定。

◆31日 パ・リーグ6球団がオンラインで社長会を開き、4月24日の開幕を断念することで一致。

◆4月1日 楽天などで監督を務めた梨田昌孝氏が新型コロナウイルスに感染。重度の肺炎で集中治療室に。

◆2日 阪神小幡がPCR検査を受ける。