激化する外野のポジション争いに鞘師智也(27)が名乗りを上げた。社会人オール広島とのプロアマ交流戦試合が行われた6日、2番右翼で先発出場し、4打数3安打2打点の猛打賞。“当落線上”鞘師の活躍もあり広島は8-7の辛勝を飾り、面目を保った。1軍へのクモの糸を上る鞘師が、遅ればせながらブラウン監督へ存在をアピールした。

 プロの面目を当落線上の選手が保った。広島市民球場で迎えたオール広島との1戦。ピリッとしないゲームを鞘師が味付けした。1回の第1打席。左腕山本(JFE西日本)の球を中前に運び、チーム初安打を記録すると、次打者尾形の右前打で一気に三塁に。続く喜田の右飛でタッチアップに成功し、難なくホームを踏んだ。

 2-4と逆転された直後の3回の第2打席では左前打。圧巻は7回の第4打席だった。スコアは依然2-4。無死一、二塁でマウンドには左腕の木嶋(MSH塩見ホールディングス)。「最悪でも走者を進めたい」(鞘師)との思いを込めた打球は右前タイムリー。鞘師のバットで勢いに乗った広島はこの回一挙3得点で逆転に成功した。

 8回の第5打席ではしっかりと犠飛を放ち、4打数3安打2打点。全方向へ快音を鳴らした鞘師を内田打撃統括コーチは「着実にレベルアップしているよ。このまま結果を出してほしい」と目を細めた。

 外野のポジション争いは激烈だ。前田智にアレックス、2軍で調整中の嶋ら実績組。株価急上昇の天谷に新人・松山…。「背伸びしても仕方がない。できることをやるだけ」(鞘師)。

 試合後、ナインに異例のゲキを飛ばしたブラウン監督だが、鞘師の活躍は脳裏に焼き付いたはずだ。東海大4年時に日本代表選出3度の逸材も、昨年ようやく初安打を記録。「今は球が見えている。しっかりと準備してチャンスに備えたい」。開幕1軍を狙う逸材が最後尾から猛スパートを切った。【佐藤貴洋】