<阪神3-2中日>◇8日◇甲子園

 阪神が、新装甲子園の開幕で中日に3-2と逆転勝ちした。2000本安打に王手で注目された“アニキ”金本知憲外野手(40)は、貴重な1打点を挙げたが、3打数無安打に終わり、到達はお預け。しかし“弟”新井貴浩内野手(31)が、7回に逆転タイムリーを放ち、通算1000本安打まであと3本とした。9日の中日戦で同日ダブル達成も可能だ。

 記録よりもチームの勝利のことで頭がいっぱいだった。7回、2-1と逆転し、なお1死一、三塁の場面だ。4万3496人の観衆は本拠地開幕での2000本期待で最高潮に達した。金本は左サイドスロー中日小林の徹底した外角攻めに食らいついたボテボテの三塁ゴロ。しかし、併殺を逃れて、貴重な3点目を追加した。

 「あのピッチャーはあれが精いっぱいやろな。あわよくば外野フライか、併殺崩れしかないと思ってた」。とにかく1点、さらに追加することを考えていた。

 新装甲子園の開幕戦は、普段よりも多い10人以上の報道陣に囲まれて球場入り。テレビ各局は金本の一挙手一投足を収めようとするなど、地元甲子園に戻り、注目度もさらに増すばかり。打席では、記念すべき瞬間を収めようと、1球ごとにフラッシュが飛び交う異常な中での勝負となったが「それは気にならんかったよ」と、平常心で打席に立ち続けた。

 この日は3打数無安打1四球に終わり、メモリアル達成はお預けとなった。

 ヒーローは“弟”新井だった。同点の7回裏1死一、三塁で中日中田が内角に投げた148キロ直球をフルスイング。詰まりながらも打球は遊撃手の頭を越す。「気持ちをこめて、いつも通り食らいついた」。クリーンヒットではないが「不器用」と評す自らのスタイル、生きざまがにじみ出た本拠地初タイムリーだった。「気持ちが入っていたんで、覚えていない。ホント、うれしかった」。一塁ベースを回って、ガッツポーズ。我を忘れるほど集中していた。

 正午すぎには室内練習場に足を運んでいた。たっぷりと打ち込み、早出の練習開始時間には汗だくでロッカールームに戻った。「いつものことですよ。でも、ちょっと早く来すぎた」と笑った。甲子園は「気持ちが高ぶるし、すごい。圧倒される」という。これで自身の通算1000安打まで残り3本。金本の2000本安打との同時達成の可能性も出てきた。「それは無理です。3対1でしょ」。可能性は低いかもしれないが、何か起こりそうな雰囲気がある。