<楽天3-0オリックス>◇12日◇Kスタ宮城

 楽天田中将大投手(19)が、オリックスを相手に、3安打完封で2勝目をマークした。完封は、昨年6月13日の中日戦以来2度目になる。全131球のうち、直球は44球と、変化球主体の投球で打者を翻弄(ほんろう)する“大人の投球”だった。悪夢の6連敗を抜け出した楽天は若き柱の活躍で2連勝、本拠地では7戦全勝となり、再び反撃態勢に入る。

 最後は直球だった。9回2死二塁。カウント2-0から外角に147キロの直球が捕手のミットを鳴らした。オリックスから10個目の三振を見逃しで奪い、田中が完封を完成させた。いつもの雄たけびはない。バックスクリーンを振り向いて、わずかに首をかしげた。「逆球だったんですよ~。(要求は)内角だったんですよ~」。試合後、照れ笑いを浮かべながら、首をひねった理由を明かした。

 意図通りの投球ではなくても、3安打の完封勝利。6回途中までは無安打だった。「ノーヒットノーラン?

 意識しませんでしたよ。あんまり(調子は)良くなかったんですけど、粘って投げられたのが良かったです。相手をゼロに抑えるのは、気分がいいものです」と胸を張った。

 131球のうち、直球は44球だけ。ラストの9回は12球中8球が直球だっただけに、8回までの変化球の多さが際だった。「いつも力んでしまう悪い癖があるので、バランスを気にして投げました」。変化球でストライクが取れるのが大きな強み。昨年はスライダーに頼るところが多かったが「今年は右打者の内角へのシュート、フォーク、どれも精度が高い」と、捕手の嶋が証言するように、配球の選択肢が増えた。さらに進化した変化球を軸に、有利に投球を進められる。

 今年は腰に張りがあり、決して100%の状態ではない。一場で大逆転負けを喫した翌日の9日、打開策で頭をひねる野村監督は「マー君に中5日を打診したら、拒否されたよ」としょげかえった。田中は「拒否はしていないっすよ。でも、中5は無理です」と話す。投手コーチやトレーナーも、腰の状態から無理はさせられないと意見は一致する。そんな中での完封勝利。力まずバランス良いフォームだから可能になる。ベンチでは、継投策は話題にもならなかった。

 6連敗という悪夢のトンネルを抜けて2連勝。本拠地は7戦全勝となった。野村監督は「今日で球場の名前を変えます。“不敗スタジアム”。岩隈とマー君は、安定感がウチでは1、2。今日は楽に見ていられた」とご満悦。安定感を増した2年目のマー君が、チームに、ゆとりをもたらした。【金子航】