<楽天8-3広島>◇31日◇Kスタ宮城

 前を向ける敗戦だった。仙台・札幌シリーズをスタートさせた広島はその初戦で楽天に3-8で敗れた。悪天候の中、先発高橋がまさかの乱調。形勢不利だったが打線は岩隈ら楽天投手陣に食い下がった。山形県天童市出身の4番栗原は「準ご当地」で1安打1打点と意地を見せた。この日はツキに見放されるプレーが多かったが今日からは6月。ツキも変わる。

 8点を取られ、圧倒的不利になっても広島ベンチに完全な敗北ムードは流れなかった。6点を追う8回、2番手青山を攻め立てた。1死二、三塁で打席に立ったのは栗原だ。

 クリネックススタジアム特有の「右翼側」ビジター席からはひときわ大きな歓声が上がる。期待に応えて、栗原は右翼フェンス手前まで届く犠打を放った。「何とか最低限といった感じですね」。主砲は敗れても前を向いていた。

 勝敗は初回の攻防でほぼ決まっていた。楽天の7勝右腕岩隈はフラついていた。1死から東出が四球で出塁。続くアレックスの打球は一、二塁間の真ん中に鋭く転がったが、雨の影響で変則的にはずみ、走者東出の足に直撃。チャンスを逸した。その裏に高橋が大量4点を献上した。

 大雨に加え、慣れない気候、球場での試合。気温は広島より10度は低く、霧も立ちこめた。「仙台」での戦いは楽天側に分があった。高橋を含め、広島ベンチのエンジンが温まるのは遅かった。が、好調の打線は集中力を失わず最終的に8安打を集めた。その中心に栗原がいた。4回に左前打、6回には四球を選び、攻撃の基点になった。

 山形県天童市で生まれ育った。仙台は実家まで車で1時間ほどの距離で、この日も母親や知人が応援に駆けつけていた。1日は弟も応援に来る。

 「岩隈さんは対戦が少ないので、どういう球を投げるのかイメージがわきにくかった。制球力があって、球持ちがいい投手でした。また明日です」。借金3。勝率5割への挑戦は一歩後退したが、コイは目の輝きを失っていない。【柏原誠】