<中日3-9横浜>◇28日◇浜松

 ハマの番長が復活投球を演じた。横浜三浦大輔投手(34)が28日の中日戦(浜松)で3失点完投し、5月9日阪神戦以来となる今季3勝目を挙げた。今季は開幕投手に指名されながら、開幕前に右肩の張りで登板回避。6月4日には再び右肩に張りを訴え出場選手登録を抹消されるなど、苦悩の前半戦だった。この試合は今季自己最多141球の力投。頼れるエースの復活でチームは今季30勝目を挙げた。

 エース三浦は最終回のマウンドへ、当然のように向かった。8回を終え投球数は119。「最後は意地じゃないけど、無理いって行かせてもらいました」。今季、苦しんだ右肩の不安は関係なかった。先頭井上に3点目となるソロを浴びたが、気を取り直し、後続の3人を抑えた。最後は平田を空振り三振に仕留め、マウンドで小さくガッツポーズした。

 だがロッカー室から出てきた三浦に、笑顔はなかった。「8回の打席前に交代を打診された?

 そうだね。でも今まで迷惑をかけた分、あの点差でもあったし、ワガママじゃないけど投げさせてもらいました」。だからこそ、終盤3イニングで失点したことに「申し訳ない」と自らを責めた。

 それでも1週間前、右肩の張りから1軍昇格したばかりで141球を投げ抜いた。投手の本能が力を引き出した。バットでは8回には左前打で出塁。続く大西の右中間二塁打で一塁から一気に本塁へかえった。必死のスライディングで、最後は左手で本塁をタッチした。「投手は投げるだけじゃない。出塁すれば、1つでも先の塁に行きたい」と言葉に力を込めた。

 マウンドではテクニックで相手を抑えた。直球のほとんどが130キロ台とスピードはなかったが、変化球を交え丁寧に腕を振り続けた。6回無死一、三塁のピンチでは、森野を4球でカウント2-1と追い込んで打ち気をそらすカーブで一ゴロ。対照的に、続く和田は直球3球で二ゴロ併殺に仕留めた。

 約1カ月半の2軍での調整中も、やることは変わらなかった。イースタン・リーグの試合にも登板し、勝てばハイタッチに加わり、ファンへのサインにも応じた。「プロなんだから、2軍も上も関係ないよ」。ただ常に1軍マウンドを意識していた。エースで連敗を2で止め、今季やっと30勝目。大矢監督は「復活してくれたと思う」と拍手を送った。それでも三浦は「まだまだ借りは返せていない」と、後半戦巻き返しを誓った。【古川真弥】