<中日4-7阪神>◇15日◇ナゴヤドーム

 球児の剛速球が「勝利の方程式」をよみがえらせた。3点リードのままつないだバトンをガッチリ握り、9回裏のマウンドに登板した。森野を追い込むとフォークで見逃し三振に片づける。ウッズには速球で勝負。中前打を許したが動じない。過去の対戦でタイミングを合わされていた和田には高めの146キロ速球で詰まらせた。4-6-3で併殺を完成。北京五輪から帰国後初めて、阪神の守護神に本来の「S」がついた。

 藤川

 (セーブは)関係ないですよ。(最近の登板は)同点の場面とかばかりでしたから。(精神的に)注意はしていましたよ。

 どんな局面でも油断しない。アッチソン、ウィリアムスとつなぎ、久々の鉄壁リレーを締めくくった。中国・北京から日本に戻り、8月28日の中日戦から戦列復帰。これまでの登板5戦で4勝を挙げたが、実は1度もセーブがついていなかった。3試合連続サヨナラ勝利などの影響を受けたもので、チームの苦しい戦いぶりを象徴していた。

 50試合目の登板で今季33セーブ目をマークした。この日はリーグトップの巨人クルーンが35セーブ目、2位の広島永川が34セーブ目を挙げ、これを追走する。北京五輪出場で生まれた“本命”のブランクもあり、セーブ王争いはし烈を極める。それだけではない。あと3セーブで、自身の通算100セーブに到達。発奮材料はそろっている。

 チームリーダーとしての自覚も十分だ。優勝に向けて、時にはチームの一致団結を図る。広島遠征中の9月上旬。試合が終わると、久保田ら同僚投手だけでなく、日ごろからお世話になっているトレーナー陣も引き連れて老舗のお好み焼き店へ。ご当地名物をほおばった。球団関係者の1人は「ホント、うれしいよね」と気づかいを感謝していた。

 栄光に向かって、あとは総力で歩を進めるだけだ。その中心には藤川がいる。ピンチでも顔色ひとつ変えない守護神が、頼もしく立ちはだかる。【酒井俊作】