<セCS第2ステージ:巨人5-5中日>◇第3戦◇24日◇東京ドーム

 守護神は意地を張っていた。1点リードの9回、マウンドに上がったマーク・クルーン投手(35)は、鶴岡のサインに首を振る。8球直球を続けたが、最後の1球は抜けて中村紀の左手首に直撃した。代走に英智が送られたのを確認して、盗塁を許すのを嫌った原監督に交代を告げられた。

 伏線が2日前の試合にあった。22日のCS初戦の9回、打席に中村紀を迎え、すべて直球勝負の指示がベンチから出た。しかし、納得できないクルーンは最後に首を振ってフォークを投げ、決勝打を浴びていた。「コーチとも話をして、納得して今日のマウンドに上がった」とは言うものの、この日の投球を見る限り、きちんと意思が伝わっていたのかは疑問。この日は球種の指示もなく、鶴岡もフォークのサインを出したが、直球を投げ続けた。「呼吸もくそもなかったです。打たれたフォークでやりかえせばと思ったのですが…」と鶴岡は唇をかんだ。

 西山バッテリーコーチも、これではお手上げだ。「意固地になっていたね。この前のことを気にしてたのかな。大人げないな。チームが勝つことが大事で、自分のプライドとか言ってる場合ではないのに」と、阿部不在の穴を必死に埋めようとしている捕手陣とのズレを守護神に感じていた。

 それでも抑えはクルーンしかいない。原監督は「彼の役割ですよ」と第4戦以降も任せることを明言した。クルーンは「今日は自分に失望している。致命的なミスになりそうだった。山口と東野に感謝したい。明日の9回に万全でいけるようにしたい」と汚名返上を願っていた。【竹内智信】