プロ野球界に「最強代理人」が参入する。日本ハム武田久投手(30)が契約更改交渉の代理人に北村晴男弁護士(52)を選定したことが8日、分かった。日本テレビ系の人気番組「行列のできる法律相談所」に出演する“笑わない弁護士”として人気のある同弁護士は、元高校球児で野球に対する知識を豊富に持ち、理解も深いことから複数の候補から選ばれた。球界屈指のセットアッパーとタッグを組み、11日に札幌市内の球団事務所で予定されている初交渉の場に登場する。

 タフでサプライズな交渉役が、プロ6年目で初めて代理人交渉に臨む武田久の相棒に決まった。00年オフから導入された主に弁護士に認められた代理人交渉の制度。その歴史の中で最も知名度のある代理人といえる。北村弁護士は「来シーズン、武田久投手が気持ち良くプレーしてもらうことが目標です。バックアップができればと思います」とコメントした。戦い慣れた法廷とは違い、畑違いの球界での交渉に挑む決意を、イメージそのまま簡潔に表明した。

 武田久は今季からマネジメント契約を結ぶ、フリーアナウンサーの派遣業務などを行う株式会社「シー・フォルダ」を通じ、代理人を選考した。東京、北海道から6、7人の弁護士をリストアップした。同社の顧問税理士が、北村弁護士の所属する「北村・加藤・佐野

 法律事務所」とパイプがあって候補に浮上。シ社の原田大代表取締役(41)が面談し、野球に対しての知識量、また理解度がほかの弁護士と比べて群を抜いており依頼を決めた。北村弁護士も受諾し、すでに球団などへ申請書類を提出し受理されている。

 適任だった。同弁護士は長野高で野球部に所属。準々決勝で敗退して甲子園出場の夢は果たせなかったが、本格的な野球経験者として弁護士界では知られている。武田久は評価が難しい中継ぎ、セットアッパー。球団側と向き合った際、しっかりとした主張ができる代理人が必要だった。同弁護士は多忙な中で自身で交渉用の資料、データ等も集めるなど熱意は十分で、武田久も対面し「詳しいですね」と信頼している。

 武田久は今季、推定年俸1億1000万円プラス出来高で契約更改した。今季終盤は本調子ではなく4勝7敗、25HPも球団史上2人目の3年連続60試合以上登板(62試合)を達成。マイケルの離脱時に守護神も務めるなど1年間フル稼働した。今オフは来季へ向けた調整などに専念したい意向があり、負担を軽減するためにも初めて代理人交渉を行うことになった。あくまで年俸闘争に重点を置くのではなく、狙いは負担の大きい中継ぎ投手の適正評価を求めるための来季以降の出来高などの条件面の整備になる。

 球団側との交渉で、根底である野球に対する認識がすれ違いが生じないようにと慎重に選定した。仲介役となった原田代表取締役は「裁判所では戦いだろうが今回は交渉です、とお願いしてある。勝ち負けを期待していない」と話した。注目の交渉は11日。ちなみに代理人は選手の掛け持ち不可のため“行列”はできない。