神様フォーク伝授だ!

 中日吉見一起投手(24)が6日、「フォークの神様」と呼ばれた中日OBで野球評論家の杉下茂氏(83)からフォークの投げ方を教わった。「手首を使って投げるように」とアドバイスを受けた吉見は「難しいけど参考にします」。今年はフォークをテーマに掲げており、神様フォークを新たな武器に、川上に代わって新エースの座を狙っていく。

 2人だけの濃厚な時間だった。ブルペンで投げ込んでいた吉見のもとに、後ろで見守っていた杉下氏がスッと近づく。そして耳元でこうつぶやいた。「フォークとまっすぐは一緒。ストレートと同じように、手首を使って投げなさい」

 プロ4年目にして、初めて受ける具体的なアドバイス。「フォークの神様」からの教えを聞くと、吉見はキャッチャーミットめがけて無我夢中で腕を振るった。

 この日投げたのは81球。そのうち10数球をフォークに費やした。「今までは(指から)抜くことを意識していて、手首が固まっていた。正直、投げてみてもまだバラバラ。手首を使うのは難しかった」。だからこそ、投げ終わった後も、再び耳を傾けた。時間にしてわずか3分。だが、ブルペンを整備する手を休め、身ぶり手ぶりでアドバイスをくれる杉下氏の教えに真剣に聞き入った。

 昨年までのアドバイスは「ボールをつかむ時にはさんでみたり、遊び感覚でやりなさい」という一言。だが今年は違った。ブルペンで吉見の投球を見た杉下氏は「いいストレートになった。4年目にして今年が一番いいボールを投げている。ストレートが良くなれば、フォークも自然と良くなる。藤川(球児=阪神)もフォークを教えるのに(弟子入りを志願してから)3年かかったんだ」と、目を細めた。

 いい直球が投げられるようになって、初めてフォークのアドバイスをするのが杉下流。阪神藤川がプロ10年目で教えを許された神様フォークを、わずかプロ4年目で教わったのは、直球の合格点をもらえたから。この日、ボールを受けた谷繁も「去年と今年じゃ全然違う。意識の問題だよ」と成長を認めた。

 オフには、社会人時代の先輩であるオリックス金子から野茂フォークのヒントをもらうなど、フォークを今年のテーマに掲げている。「フォークがいかないといいピッチングはできない。(アドバイスを)参考にして(しっかり決まる)確率を上げていきたいですね」。ブルペンでも試合と同じ意識で投げるなど、さらなるレベルアップを図っている吉見。215勝投手からの金言を胸に、レベルアップしたフォークで、新たなエースの座に名乗りをあげる。【福岡吉央】

 [2009年2月7日12時24分

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