<ロッテ23-2広島>◇11日◇千葉マリン

 ロッテが仰天の“歴史的猛攻”を演じた。11日の広島戦(千葉マリン)での6回、いずれもプロ野球新記録となる1イニング打者20人の攻撃で、15打点で15得点を挙げた。14連続得点も新記録で、10打数連続ヒットはプロ野球タイ記録となった。3番大松尚逸外野手(26)は打者2巡の3打席に立った。今季、両リーグを通じ最多の23安打23得点で大勝。21点差は交流戦で最大得点差で、まさに歴史に残る勝利を飾った。

 ロッテの攻撃が延々続いた。詰まった当たりは外野の間に落ち、ゴロの打球はおもしろいように内野の真ん中を割った。午後8時1分から48分間にもわたった攻撃は、いくつもの日本記録を生んだ。1イニング14人連続得点、15打点の15得点。3番大松は1イニングで3回も打席に立った。前日10日は今季4度目の完封負けを喫したばかりだが、これまでのシーズンのうっぷんを晴らすようにヒット、ヒットを続けた。

 さすがにスタンドのファンは“記録的攻撃”に気がついた。13点を奪い打席に代打田中雅が向かうと、右翼席から「もう1点、もう1点」とコールが起きた。田中雅は「あと1点コールをしていたので、なんかの記録だとは思ったけど、なんの記録かは分からなかった。とにかく打線に勢いがあったので、続きたかった。最後は追い込まれていたので、最悪でも犠牲フライという気持ちでした」。1死満塁から中犠飛で14点目を挙げ期待にこたえた。

 最後の15点目の中前適時打を放ったのは、途中出場の堀だった。「代走からそのイニングで打席に入ったのは、プロ生活で初めての気がする」と、ただ驚くばかり。40歳のベテランでも初体験のこと。とにかく笑うしかなかった。

 今季はあと1本が出ない試合が目立った。6月5日の中日戦後にはバレンタイン監督が、高橋打撃コーチとランペン・コーチの配置転換まで示唆した。打線の再生に悩んで、口元にはヘルペスができてしまったほどだった。西村ヘッドコーチも「睡眠時間を削ってるんだろう」と気遣っていた中での打線爆発だった。

 バレンタイン監督は「これまでラッキーな1本が出ずに苦しんだけど、そのラッキーな当たりがいっぱい出た。09年の打線は、日本記録をつくれる力を持っているということ。自信、誇りにし、これからのきっかけにしてほしい」と、選手をたたえた。

 まるで草野球のような珍記録も生まれた。3打席も回った大松は「1イニングで3打席も回ってきて不思議な感じでした。ただ、そのうちの2アウトが自分。得をしたのか、損をしたのか個人的にはよく分からないなあ」と頭をかいた。ベンチでは、大松をからかうようにナインが盛り上がった。永遠に続くかと思うような猛攻。選手は塁に出てベンチに戻っては、息つく暇もなく打席へ向かった。

 お立ち台に上がった今江は「ぼくの満塁弾は、忘れられてるんだろうなって思った」とニヤリ。3回の3号満塁弾もかき消されたほど、何もかもがケタ外れのイニング。チーム打率は試合前から一気に7厘もアップした。低迷するロッテ打線が底力を発揮。巻き返しのきっかけにしたいところだ。【竹内智信】

 [2009年6月12日9時30分

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