<広島2-1横浜>◇29日◇マツダスタジアム

 これが4番の仕事じゃ!

 コイの主砲・栗原健太内野手(27)が、1-1同点の9回裏、執念のタイムリーヒットで横浜にサヨナラ勝ち。初回の先制適時打に続く大仕事で、最近不振に陥っていた主砲に笑顔が戻った。3位ヤクルトとのゲーム差を3に縮め、奇跡のクライマックスシリーズ(CS)進出へ希望を残した。30日も、全力で勝ちに行く。

 センター方向を見やりながら、栗原は心の中で叫んだ。「落ちろ、捕るな!」。その執念が届く。打球は横浜中堅金城の前で弾み、二塁から脱兎のごとく代走木村がホームに駆け込んだ。CS進出に望みをつなぐサヨナラヒット。自身07年8月以来2年ぶり、そしてマツダスタジアムでは初のサヨナラ打だった。「(中堅手が)前に来ていて(ヒットかどうか)微妙な打球だったので、落ちたのを見てよかった~と思いましたよ。いい場面で打てて本当によかったです」と、4番の仕事をこれ以上ない形で果たした男は、最近あまり見せない笑顔で振り返った。

 今季は打撃に苦しんできた。これだ、というものをつかんだと思っては相手投手に崩されて、暗中模索する日々。早出特打はもちろんのこと、試合後、深夜まで居残って打ち込むこともあった。

 練習でも様々なことを試している。最近では、バットのグリップから白いテープを巻き、スイング時の目印にしている。バットが外から回るとその目印が視界に入らない。正しいスイングができていれば見える。そうすることで自分の打撃フォーム確認に役立てているという。

 それでも結果が出ず、前日の試合でヒットを打つまで22打席無安打だった。だが、この日は初回の2死二塁の場面で右前へ先制の適時打を放った。「あれも、あわててバットを出したらたまたまいいところに飛んでヒットになったんです」と苦笑するが、初回に結果が出たことが、9回のサヨナラ打にもつながった。

 CS進出争いでも、3位ヤクルトとの差を1つ縮めた。残り7試合で3ゲーム差は、簡単に逆転できるような差ではない。だが、その奇跡を起こすには、まずは広島が勝ち続けることしかない。栗原は「相手が負けることを待つよりも、残りは全部勝つつもりで行きますよ」と言った。迷いも戸惑いもない。目覚めたコイの主砲が、最後までチームを引っ張る。【高垣誠】

 [2009年9月30日9時43分

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