<セ・パ誕生60周年記念試合:プロ選抜1-1大学日本代表>◇22日◇東京ドーム

 日本ハム中田翔内野手(20)が、「今季最終戦」で4万人からブーイングを浴びた。セ・パ誕生60周年記念「プロ選抜対大学日本代表」に、8番指名打者で出場。5回に左中間へ安打を放ったが、長打コースにもかかわらず一塁でストップし、さらに次打者・銀仁朗の右前打の際に三塁を狙ってタッチアウトになった。未来のスター候補生とプロの競演という親善試合の舞台は、中田のプレーで異様な空気に包まれた。

 鳩山首相の始球式や早大斎藤対巨人坂本など、拍手と歓声で和やかなムードだったはずの東京ドームに、突然、4万1025人の「えーっ」「おいおい」という悲鳴交じりのブーイングが響いた。犯人は、中田だ。5回1死、カウント2-2と追い込まれながら、近大中後の144キロ直球を強烈なライナーで左中間へはじき返した。さすがはプロ。そう思った次の瞬間、ファンは一斉に目を疑った。フェンス手前まで打球が到達していたにもかかわらず、中田は一塁をまわって悠々と足を止めた。「(二塁に)余裕で行けましたね。恥ずかしい。(コーチの指示が)ストップだと思った。感覚ではセンター前だと…。打球を見てなかったのは悪かったです」。帰りの通路でも、ばつが悪そうに苦笑いを浮かべた。

 ミスには続きもあった。次打者・銀仁朗の右前打では、「汚名返上」とばかりに全力疾走で二塁をまわったが、自ら判断してストップ。だが今度は、視線の先で三塁コーチの広島野村新監督が手を回しているのが目に入り、再びトップギアへ入れ替えた。しかし…。“一時停止”が仇となり、三塁ベース直前でタッチアウト。「ダメだ…。(足が)遅いっすよ」。恥ずかしさと悔しさで、うつむいたまま一塁ベンチに引き揚げた。

 入団当初から課題とされてきた走塁面でのミス。プロ選抜を率いたヤクルト高田監督が「(急に止まったから)けがをしたのかと思った。珍しいのを見たね」と話せば、テレビ中継では解説の星野仙一氏から「プロのプレーじゃない。(所属する球団の)監督、コーチが恥をかいてしまう」と厳しい言葉が飛んだ。

 それでも収穫はつかんだ。本人が中前打だと感じた打球がフェンス手前まで突き抜けたのは、ボールに力が伝わっている証拠。実は試合前の打撃練習中、巨人原監督から声をかけられた。「軸足の使い方を教えてもらいました。ちょっと(体が)前に突っ込み気味だったので」。日本シリーズ中にあいさつを交わしたことはあったが、技術的な話を聞くのはもちろん初めて。巨人で4番を務め通算382本塁打を放ち、監督としては日本と世界を制した指揮官からの“個別指導”は、かけがえのない財産となった。

 1軍デビューを果たし、イースタンリーグで打撃2冠に輝いた今季、最後の最後は「珍プレー」で幕を閉じた。それでも、スタンドを沸かせることができるのは、持って生まれたスター性のなせる技。来季はブーイングではなく歓声で、球場を盛り上げる。【本間翼】

 [2009年11月23日11時7分

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