【ゴールドコースト(オーストラリア)13日=広瀬雷太】V9に匹敵する黄金時代を築くため、巨人原辰徳監督(51)が大胆な配置転換を断行する。今季リーグ最多タイの35ホールドをマークした球界屈指のリリーフ左腕、山口鉄也投手(26)を先発に転向させる考えを明らかにした。来季、リーグ4連覇と2年連続日本一を狙うチームにとって「絶対的なエース」の育成が必要と判断。山口に先発の柱となれる潜在能力を感じた原監督が、大きな決断を下した。

 優勝旅行中のオーストラリアで真夏の日差しに目を細めながら、原監督がとっておきの「秘策」を明らかにした。「来季は山口を先発候補の1人として考えている。投手コーチともよく話し合って決め本人にも伝えた。結果的にどうなるかは分からないけど『おれに任せてくれ』と。彼も『分かりました。不安はあるけど、挑戦してみたい』と答えてくれた」。先発に転向させるプランは、ずっと頭の中にあった。熟慮の末、東京ドームでファンフェスタが行われた11月23日に本人に伝えた。

 原監督はここ数年、柱となる日本人エースの重要性を痛感した。特に短期決戦では絶対的な力を持つ先発投手を擁するチームが優位に立つ。昨年は涌井や岸がいる西武に敗れて日本一を逃した。今年の日本シリーズも、日本ハム・ダルビッシュが完調なら結果は逆に転んでいたかもしれない。「短期決戦で重要なのは先発投手。山口の可能性や若さ、チーム事情などを総合的に考えて先発に挑戦させることにした」と明かした。巨人の最終目標はリーグ優勝ではなく、あくまで日本一。秋の戦いを見据え、勝利の方程式が崩れるリスクを承知で、本格的なエース育成に乗り出す。

 ゴンザレス、グライシンガーなど外国人投手に頼っているのが現状。原監督は「15勝から20勝できる可能性がある日本人選手を先発で起用したい。5、6勝しかできないような投手は最初から先発はやらせない」と言った。また「酷使した部分もあったからね」とも続け、山口がここ2年間で合計140試合に登板した疲労にも配慮。今後もリリーフとして起用し続けるよりも、先発投手として大きく育てることが、チームのためにも本人のためにもなると判断した。

 何より、山口本人が原監督の思いに共感し、やる気になっている。これまでの実績を捨て、ゼロから先発としてやり直す決意を固めた。「最多勝争い?

 期待されているのでそのぐらいの成績を残せるよう頑張ってやりたい」と力を込めた。理想の先発像について聞かれると「ヤクルト時代の石井一久さんのピッチングが好きでした」と、150キロを超える直球とスライダーで打者をねじ伏せる投球を思い描いた。V旅行中の山口はゴールドコーストの宿舎を飛び出し、砂浜でシャドーピッチングや走り込みを行った。

 「チームは進化していくもの」という信念を持つ原監督は、これまでも適材適所を見抜く独特の感性を発揮して周囲を驚かせてきた。02年の「ストッパー河原」や、07年の「1番高橋由」は優勝の原動力になった。今季も坂本を1番に据えて才能を開花させ、外野が本職の亀井の一塁コンバートや、2軍時代はリリーフだったオビスポの先発起用も当たった。「先発山口」がズバリ成功すれば、巨人にV9以来の黄金期を迎える力が備わる。

 [2009年12月14日8時16分

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