プロ野球の巨人、大リーグのパイレーツで活躍した桑田真澄さん(41)の父泰次(たいじ)さん(67)が17日、浜松市中区の自宅兼喫茶店73平方メートルを全焼する火災で死亡した。死因は一酸化炭素中毒。午前4時20分ごろ、1階の店舗から出火し2階の自宅にいた泰次さんが逃げ遅れた。泰次さんは浜松市内で少年野球チームの指導をしており、この日が誕生日だった。桑田さんは正午ごろ、浜松市内の病院で泰次さんの遺体と対面。「最後にもう1度、キャッチボールがしたかった」とうつむいた。

 浜松中央署などによると、泰次さんは火災のあった前夜、店舗で少年野球チーム関係者ら数人と自身の誕生日パーティーをした後、飲食店へ出かけた。数件をはしごし、午前2時ごろ最後に立ち寄った店の店員が、泰次さんと女性(36)を車で泰次さんの自宅へ送った。

 自宅で泰次さんは女性に「2階で休んでてくれ」と言い、1階で飼い犬にえさをやった。女性は1度眠ったが目を覚まし「(帰宅するため)タクシーを呼んでください」と、横で寝ていた泰次さんを起こした。泰次さんがタクシー会社へ電話をするため扉を開けたところ、一気に煙が入った。火事に気付いた女性は窓を開けて助けを呼んだが、煙を吸い込んだ泰次さんはソファに倒れ込んだ。女性は隣人が出したはしごで救出されたが、煙を吸い込んだ泰次さんは逃げ遅れた模様。火災発生の原因は不明だが事件性はなく、1階の店舗部分が出火元であることは確認されている。

 桑田さんは17日正午ごろ、身元確認のため浜松市内の病院で遺体と対面した。「今年は(早大)大学院を卒業した後に父と1年間、ゆっくりしようと計画していた。最後にもう1度、キャッチボールがしたかった。非常に残念だ」とうつむいた。さらに妻、次男とともに、火災現場へ移動し「僕よりも野球が好きな父親だった。夜、(誕生日の)電話をしようと思っていたのに」と悔やんだ。

 泰次さんは離婚し、十数年前に浜松に移住して小、中学生を対象とした硬式野球チーム「浜松ジャイアンツボーイズ」を結成し、指導していた。3、4年前から現在の自宅兼店舗を借り受け、喫茶店の店主を務めていた。店舗は同チームの事務局も兼ね、泰次さんはチームの会長を務めていた。300円台の廉価でモーニングセットなどを提供していた店の看板には、桑田さんが現役時代に着けていた背番号「18」が描かれていた。店内にはPL学園時代の清原氏とのツーショット写真、エンゼルス松井のサインなども飾られていた。

 少年野球チームの関係者によると、泰次さんは野球の指導に熱心で、選手に対し「自動販売機の明かりがあれば、練習はできる」と熱弁を振るっていた。桑田氏と泰次さんは正月に顔を合わせる程度だったが、今年は一緒にゴルフをする約束をしていたという。

 [2010年1月18日8時30分

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