オレ流コンバートいける!

 今季、二塁から遊撃への転向に挑戦している中日荒木雅博内野手(32)が11日、楽天戦(浜松)で“合格点”の動きを披露した。屋外球場で初めて9回まで守った荒木は5つのアウトを無難にさばいた。オープン戦2度目の1安打完封負けを喫したものの、懸念材料だった「遊撃・荒木」に形が見えたことでチームはまた1歩、開幕へと近づいた。

 寒風が吹き抜ける浜松球場の気温は10度に満たなかった。足元は打球が転がりにくい土のグラウンド。遊撃手荒木にとってこの日はコンバートの成否を占う上で絶好の「挑戦」だった。2回に早速、山崎武の三遊間のゴロを確実にさばいた。7回には宮出のさらに深いゴロを捕球すると踏ん張って一塁へ。際どいタイミングで刺した。

 荒木の特長が出たのは8回だった。俊足・鉄平のボテボテの打球が遊撃前に転がった。猛然とダッシュしてランニングスロー。間一髪のタイミングでしとめた。「寒い中、やれたことが1番の収穫だった」。試合後、控えめな表現の中に少しの安堵(あんど)感がにじんだ。肩に不安を抱え、送球が課題の荒木にとっては環境がよくない中でミスなく守れたことが最大の収穫だった。

 昨年12月、落合監督が荒木、井端のコンバート再挑戦を決断。「できなければ別の選手を使う」と退路を断った。ミッション成功へ特命を受けたのが辻総合コーチと風岡コーチ。キャンプでは不安のある荒木を密着指導した。鬼教官の1人、風岡コーチからも現時点での“合格点”が出た。「きょうの結果は自信にしていいと思います。もちろん、アウトの内容については課題も見えた。荒木の能力を考えれば、まだ満足できるものではない。ただプラス材料を積み重ねていけばいいことですから」。

 もちろん、球界最高と言われた二遊間コンビをあえて壊したからには目指す理想は限りなく高い。例えば2回2死無走者。三遊間を抜けるリンデンの打球にダイビングした。「あれは体が勝手に反応してしまった」。荒木も自覚していたが走者がいない以上、立って捕らなければアウトになる可能性はない。ダイビングすれば弾いて傷口を広げてしまう危険性もある。あえて単打にするという冷静な判断も求められるのだ。

 「まだまだ。あんなもんじゃないよ」。名手・辻コーチはにやりと笑った。最高の遊撃手を目指した戦いはシーズン中も続く。ただ、昨年は開幕直前でご破算となった「コンバート」の2年越しの実現へ。浜松での5アウトが大きな1歩になる。【鈴木忠平】

 [2010年3月12日11時10分

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