<阪神10-6広島>◇7日◇甲子園

 マーびっくり!

 ジョー弾ちゃうで~。阪神が満塁アーチ2発でドラマチックに逆転勝ちした。1度は5点差をひっくり返されたが、今年の虎は違う。8回、助っ人マット・マートン外野手(28)がバックスクリーンに決勝の7号グランドスラムをぶち込んだ。初回の城島健司捕手(33)と合わせ、1試合2発は満塁本塁打は96年の新庄、塩谷以来14年ぶり。メモリアルな夜に虎党が酔いしれた。

 まさか、こんな結末が待っていたとは…。割れんばかりの歓声。白球がバックスクリーンに飛び込む。マートンはスピードを緩めることも忘れ、ダイヤモンドを駆け回った。大好きな仲間たちとハイタッチ。城島のおなかを両手で揺らすと、ヘルメットを脱がされた。笑顔、笑顔の中で、ひげ面の赤毛助っ人が至福の瞬間に浸った。

 城島の先制満塁弾で序盤に大量リードを奪いながら、中盤に迫られ、終盤に逆転され、同点に追いついて…。激戦のハイライトは6-6の8回1死満塁だ。打席ボックスの近く。マートンは代打矢野の同点適時打で生還した城島と、初対戦する広島高橋のボールの軌道を確認した。

 マートン

 城島も対戦したことがない投手。打席で感じたこと、見たことを教えてもらった。

 カウント2-2からの7球目。見逃せばボールの外角高め141キロ直球を強引に振り抜き、走者一掃どころか自分までホームインだ。7号。メジャーも含めて自身初の満塁アーチ。「矢野さんも打ってくれたし、チームの勝利だよ。本当に良かった!」。興奮してしまうのは訳があった。

 5月7日。実はステファニー夫人の26回目の誕生日だった。休養日の前日6日には兵庫・尼崎市内のショッピングモールで買い物。財布と靴をプレゼントしたが、もっともっと喜ばせたかった。この日、神戸市内の自宅を出発する際には「誕生日だし、怖がらずにホームランを打ってきてね」と冗談交じりに愛のゲキを受けた。妻の言葉がまさかの結果を導き、赤毛の助っ人はニッコリ。甲子園初のお立ち台。最愛の妻へ、大声を張り上げた。

 マートン

 いつも面倒を見てくれてありがとう。ハッピーバースデー!

 ハッピーバースデー!

 夫のため、異国の地での出産を選択してくれた。「こっち(日本)に来るだけでも大変なのに…」。毎試合欠かさずテレビ中継をチェックしながら、1歳の長男マイカ君、生後1カ月の長女メイシーちゃんを育ててくれる。9日の「母の日」にはバラの花束とギフトカードを用意済み。それでも伝えきれない感謝の気持ちをバットに乗せ、苦しむチームを救った。

 初回の城島と合わせ、阪神で1試合2満塁弾は96年以来、14年ぶり。今季最多の10得点で20勝目を飾り、首位巨人まで1・5ゲーム差に迫った。真弓監督は「(巨人との)ゲーム差よりも、とにかく1チームだけ走らせるわけにはいかない。ウチなりにしっかりとついて行きたい」と力を込めた。2010年版猛虎打線、この底力があれば夢は膨らむ。

 [2010年5月8日10時51分

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