<西武1-5巨人>◇30日◇西武ドーム

 巨人が天敵岸を攻略した。西武4回戦(西武ドーム)の1回に小笠原道大内野手(36)が左越え先制ソロで流れをつくると、3回にはアレックス・ラミレス外野手(35)が左越え2ランで続いて2人で全5打点を挙げた。これまで岸のカーブに苦しみ、08年の日本シリーズを含めて0勝4敗で本塁打も0本だったが、ついに土を付けた。チームは3連勝で貯金を今季最多タイの14とした。

 ヒーロー2人は誇らしげにフラッシュを浴びた。小笠原とラミレス。全5打点をたたき出し、6戦目で岸に初めて勝った。1回、通算350号となる先制13号ソロを放った小笠原は「四球で(ラミレスに)つなげられたのは大きかった。塁に出てかえしてくれたのはさすが」と、うなった。

 3回は先頭で四球を選び、ラミレスの18号2ランを呼んだ。3-0の7回にも四球で2死一、二塁を演出。直後、2点二塁打を放ち岸を降板させたラミレスは「小笠原さんの存在は大きい。四球で良い流れを作ってくれた」。屋台骨2人は互いを認め賛辞を送りあった。

 岸攻略。ミーティングでも対策が練られた。直球、カーブ、チェンジアップと、どれもがウイニングショットとなり得る球界屈指の好投手。小笠原は「来た球を打つ。いつも通り。(球種を)絞ったところで、それが来るとは限らない」と言ったが、やみくもに振らない姿勢は明らかだった。1回の先制ソロは、カウント0-1で高め直球を左翼へたたき込んだ。2回の第2打席では、一転してカーブを振った。2ストライクと追い込まれてからもカーブをファウルでしのぎ、四球を選んだ。7回の四球でもカーブを見極めた。

 ラミレスは浮いたカーブを左越え2ラン。篠塚打撃コーチが「カーブをとらえたのが大きい」とうなる1発だった。これまでのように翻弄(ほんろう)されることはなかった。

 戦う姿勢はベンチワークにも現れた。1回、2回と空振り三振を続けた脇谷は、2回裏の守りから交代を命じられた。2ストライクと追い込まれるまで、カーブ、直球ともに見逃した。伊原ヘッドコーチは「脇谷も準備していたが、原監督の目には足りないと映った。あの交代でベンチが締まった」と明かした。凡打にも内容を求める指揮官の信念が読み取れた。

 その原監督は「岸はうちにとって特別な投手。今日の試合でチームも落ち着ける。ジャイアンツの戦う集団は、ゆっくりと床に就けるでしょう」と喜んだ。前回12日、4安打で1点しか奪えずに負けた際、「選手は眠れないほど悔しいだろう」と話していた。18日後の再戦で、借りを返す快勝。同じ轍(てつ)を踏み続けないところに、首位巨人の強さがあった。【古川真弥】

 [2010年5月31日8時31分

 紙面から]ソーシャルブックマーク