<オールスター:全パ1-4全セ>第1戦◇23日◇福岡ヤフードーム

 阪神藤川球児投手(30)が全セのストッパーとして9回に登板し、全16球ストレート勝負で3者連続空振り三振と、魂を込めた投球をみせた。互いに「本塁打か三振か」と公言してきた西武中島との“相思相愛”の対決も制し、試合を締めた。初出場した05年第2戦以来のセーブを記録。後半戦の逆転Vも、この男がいれば心強い。

 球児は笑って首を振った。フィナーレまで、あと1球。城島がフォークの握りで右手首を動かすと、マウンド上で“拒否”のポーズ。「フォークはどう、となったから『ない、ない』と。ここまで来たら1球(フォークを)投げても10球投げても一緒になるから」。力と力、真っ向勝負にこだわった。16球目は外角低めの150キロ。西武中島のバットは簡単に空を切った。

 出番は3点リードの9回。1番里崎への初球、城島が外角に構えると“真ん中に構えてください”と自信たっぷりに両手を動かした。初球、外角高めに抜けた151キロがミットをはじく。驚くべき伸びに快投の予感。ここからノーサインで全球ストレートを選んだ。里崎はフルカウントから真ん中151キロで空振り三振。2番片岡も同じフルカウントから外角低めに外れる151キロで空振り三振に仕留めた。

 藤川

 (全球直球を)決めてはいなかった。打たれたら変化球を投げようと思っていたけど、バッターの振りを見ていると「いける」と思って。

 そして、最後は中島と対決だ。思い出すのは6月10日西武戦(西武ドーム)、9回2死二塁。高めに散らばった直球3球を空振りさせて三振を奪い「ストライクが入らんと、ナカジにごめんね、と。オールスターに出られたらまた勝負したいよね」と苦笑い。その時願った勝負が実現し、燃えた。150キロ、151キロ、150キロ。すべて空振りで3球三振。自身初の球宴3者連続三振を完成させた。

 試合前練習、中日岩瀬に頼まれ、キャッチボールを行った。2人は熱い野球談議を交わす仲。岩瀬が通算250セーブを達成した6月、球児はお祝いにTシャツを贈った。「奥さんが何枚か買ってきてくれて」。球界を代表するクローザーを尊敬してやまない。この日はそんな大先輩の後ろを任された。「ちょっと申し訳なかった。250セーブという、すごい記録を作った方だから」。熱きバトンを受け取り気合が入った。

 6年連続6回目のお祭り舞台。05年以来の球宴2セーブ目を挙げ、野球ファンをうならせた。16球のうち14球が150キロ台。バットに当てられたのは1球だけだ。こだわり続ける、最速152キロの直球はあまりに魅力的。「また明日です」。次に投じられる“火の玉ストレート”が待ち遠しい。【佐井陽介】

 [2010年7月24日8時57分

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