<オールスター:全パ1-4全セ>第1戦◇23日◇福岡ヤフードーム

 MVPの賞金300万円をゲットし、巨人阿部慎之助捕手(31)は相撲のように手刀を切るまねをした。ちゃめっ気たっぷりにお立ち台へ。ファンの視線を独り占めすると「明日も最高のプレーを見せられるよう頑張ります」と声を張り上げた。

 野球少年の顔に戻った。自身2度目の栄誉の決め手は、日本ハム・ダルビッシュとの息詰まる10球勝負。「良いボール。ファウルにするのが精いっぱいだった。サイドやアンダー特有のフワッと浮く感じ。それをオーバーで投げるんだから」と半ば驚き、半ば楽しそうに振り返った。1点リードの4回無死一、二塁。球界を代表する右腕が「投げる」と公言していた「新球」。内角へ浮き上がるように食い込むカットボールをファウルでしのいだ。最後はフルカウントで、内角直球をとらえた。腕を折り畳み、右翼線へ技ありの適時二塁打。2回の先制打とあわせ、2打点を挙げた。

 ファンのためにー。夢舞台でも同じだった。ファン投票で選ばれ、試合前の本塁打競争に出場。阪神城島との決勝戦に惜しくも2本差で敗れ「(打撃投手の)森中さんにお小遣いあげようと思ったのに」と賞金を逃し、冗談交じりに悔しがった。東京ドームの打撃練習では、打球を豪快にスタンドインさせる姿が印象深い。だが、実は「練習でも本塁打を狙って打つことはないですよ。だから(本塁打競争は)難しいところもあるんですよ」と漏らしていた。それでも「選んでもらった以上は、しっかりやります」と全力で臨んだ。

 主将として、正捕手として、チームを引っ張る。3回からは、内海、久保と巨人の投手陣をリードし、無失点。「内海もボールは、そこまで悪くなかった。いいきっかけにしてくれればいい」と、連敗中の左腕に熱い視線を送った。27日からは、3ゲーム差に迫る中日と3連戦。しばしシーズンの激闘を離れていても、脳裏には戦いへの道筋が刻まれている。【古川真弥】

 [2010年7月24日8時58分

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