<ソフトバンク2-8楽天>◇29日◇福岡ヤフードーム

 指揮官から異例の“公開説教”だ。ソフトバンク大隣憲司投手(25)が、背信投球でチームの連勝を9で止めた。3回までに3本塁打を浴びるなど、最下位の楽天相手に序盤で7失点。3回裏には、試合中のベンチ内では珍しく秋山幸二監督(48)から注意を受けた。“説教”後は4イニングを無失点に抑え意地は見せたが、7回9安打7失点で8敗目。チームは5年ぶりの10連勝を逃した。

 異例の“公開説教”が飛び出した。3回裏の一塁側ベンチ。直前に2者連発を浴び一挙5点を失った大隣が、秋山監督に呼ばれた。10連勝を託されたマウンドで、3回までに3被弾7失点。うつむき気味の左腕が指揮官の隣に座ると、身ぶり手ぶりを交えての“説教”がスタートした。

 顔と体を硬直させたまま、涙すら出ない。昨季は主将の小久保、今年6月には川崎からマウンド上で“公開説教”を受けた。過去2度は泣きそうな顔を浮かべたが、今回は違う。相手は指揮官。「まあ、内緒」と内容については濁したが、秋山監督が試合中のベンチ内で選手と話し込んだのは監督就任後初めて。事の重大さを最も肌で感じたはずの左腕は、固まったまま首を小さく縦に動かすことしかできなかった。

 重圧から力みまくっていた。チームは9連勝中。自身は、泥沼の6連敗と2軍生活を経て前回登板で103日ぶりの2勝目を挙げたばかり。3回表は3点目を失った直後に、中村紀に力勝負を挑み3ランを浴びた。ショックをひきずったまま、次打者のルイーズには甘く入った初球を被弾。「(監督からの注意は)緩急の使い方とかだったりです。力みがあったのかもしれない。チームに申し訳ない…」と5年ぶりの10連勝を逃した責任を背負い込み、うなだれた。

 指揮官の思いに、次回こそ応えなければいけない。秋山監督は「4回からの投球ぐらいでいいと思う。十分あれで抑えられる」と、4回以降立ち直った左腕をフォローした。異例の“説教”は期待をしているからこそ。上位3チームが1・5ゲーム差にひしめく混戦を抜け出すには、チーム勝利数の約半分を稼いでいる杉内、和田以外の投手の奮起が不可欠だ。30日のロッテ戦に先発する山田の結果次第ではあるが、大隣の次回先発チャンスは十分ある。「頑張ってもらわなきゃいけない投手だから」と秋山監督。マウンドで、指揮官の愛に応えるしかない。

 [2010年7月30日11時1分

 紙面から]ソーシャルブックマーク