楽天の新監督候補として、元西武監督の東尾修氏(60)と元巨人、パイレーツの桑田真澄氏(42)が浮上した。楽天は29日、今季最終戦となった西武戦(Kスタ宮城)後、成績不振と人気下降を理由に任期を1年残してマーティー・ブラウン監督(47)の解任を発表。後任は明らかにされていないが、東尾氏、桑田氏の名前が有力候補にリストアップされており、今後本格的な交渉に入るとみられる。

 ブラウン監督が契約を1年残して楽天を去る。最終戦前、米田球団代表から契約終了の通告を受けた。陽気な監督も無念そうだったという。だがグラウンドに出ると努めて明るく、選手とスキンシップして回る姿があった。シーズン終了のあいさつもなし。ファンにメッセージを残す機会はもらえなかった。「非常に残念だ。来季に向けチームをどう強くするか、考えていた矢先だった」。勝負の世界の常とはいえ、寂しい幕引きだった。

 シーズン最終盤に入っても、監督に対し内々での続投要請がなかった。29日未明、ブラウン監督に近い関係者は球団の対応を受け、「こちらからお願いした2年契約ではないのに、この時期まで何も要請がない。2、3人の候補と交渉していると思う」と、急転解任を覚悟していた。

 後任探しはこれから本格化する。米田代表は「全く決まっていない」としたが、最有力候補は東尾修氏と桑田真澄氏だ。東尾氏は西武監督として2度リーグ優勝の実績があり、前年もぎりぎりまで楽天監督候補に挙がっていた背景がある。人脈も豊富で、来季日本球界復帰を視野に入れるかつての教え子、松井稼頭央内野手獲得に向け太いパイプができる。急転解任に伴う組閣もスムーズにいく。

 桑田氏は巨人で長くエースを勤め、米大リーグ・パイレーツでメジャー登板も果たした。指導者の経験はないが、文句なしの知名度と新鮮さがある。現在は国外におり、10月以降、日本シリーズなどの評論活動はキャンセルしている。ともに楽天トップとの交流があり、次期監督を務める条件は整っている。

 既定路線だった続投方針が大きく転換したのは、直近のことだった。昨年と反比例し、シーズンが進むにつれ本拠地動員は落ちていった。米田代表は「勝つことがすべて」とシビアだった。球団は小さな経営スケールでリスクを抑え、利益を生む運営方針を貫いている。Kスタ宮城の観客離れは非常に痛手で、前年比で億単位の赤字が出る試算があった。データに采配の根拠が偏るブラウン監督の手腕に対する疑問もあり、風向きは急に変わった。

 観客が求める第一義がチームの勝利であるならば、東尾氏の実績、力量でチーム強化を図るのが現実的。話題性、カリスマ性にファンへの訴求力を求めるなら、力量は未知数だがビッグネームの桑田氏に託す選択肢が浮上する。だが一方、条件面のハードルは東尾氏より高い。今季の教訓を踏まえ候補を絞り込む。最下位からの巻き返しを図る上で、組閣を含めたスタッフ編成に遅れが出ることは許されない。球団創設7年目で4人目の監督招聘(しょうへい)は、慎重かつ速やかな対応が迫られる。

 [2010年9月30日8時42分

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