中日和田一浩外野手(38)が2日、落合博満監督(57)の助言を得て「3冠打法」挑戦を開始した。昨季MVPを獲得した打撃フォームを捨て、スタンスを完全スクエアにした新打法で今季に臨むことを宣言。球団史上初、セ・リーグでは86年バース以来、25年ぶりの3冠王誕生へ、気迫の500スイングとなった。

 和田の新たな挑戦が幕を開けた。午前中のフリー打撃中、ケージ裏で見守っていた落合監督が歩み寄ってきた。3冠王とセ・リーグMVPの打撃論が始まった。2人だけしか立ち入れない世界だった。

 「まだ無駄が多いから(打撃を)変えないといけない。去年のシーズン中から考えて、監督からも言われていた。今日もそれについて。僕がもし(プロ野球の中で)1番なら必要ないけど、僕は1番じゃない。現状を打破しないと」。

 昨季MVPを獲得した打法を捨て、新たな打撃フォームに挑戦する。勇気ある決断をした和田の背中を、落合監督が押した。その後は屋内練習場に移動してマシン打撃を行った。昨季はオープンに構えてテークバックで1度、スクエアに戻してから、再びオープンに踏み出して打った。だが、今年は完全スクエアに構え、そこからオープンに踏み出していく。「ボールの見え方が違う。視界が広がるんです」と話した。

 オープンからテークバックの際にスクエアにすれば、視界は1度狭くなる。だが、新打法はスクエアからオープンに踏み出すため視界は広がっていく。打撃の手順をシンプルにし、ボールを見やすくする効果がある。では、その目的は?

 「打てないボールをなくしたい。まだストライクゾーンの中で打てないところがあるから」。

 内角と外角、高めと低め、プロの打者でもストライクゾーンの中で必ず弱点があると言われる。本人は明かさないが、和田は昨季、内角球につまることが多かった。新打法で唯一の弱点を克服し、どのコースでも打てる完全無欠の打者となる。完成すればすべての部門でトップ。すなわち、3冠王への挑戦なのだ。

 「このままじゃ、だめってことだよ」。

 かつて3冠王に3度輝いた落合監督は、和田の挑戦をひと言で表現した。08年、和田が西武からFAで移籍してきた時から二人三脚での挑戦を始めた。落合監督が見守る中、毎年、新打法に挑戦し、毎年、数字を伸ばしてきた。その飽くなき探求はついに3冠王を狙うレベルまで達した。

 この日、北谷球場で最後までバットを振っていたのは、若手でも、新人でもなく、和田だった。午後6時過ぎまで合計500スイング。辺りが暗くなり、他の選手が去った後も明かりがついた屋内練習場からは、打球音が響いていた。【鈴木忠平】

 [2011年2月3日11時41分

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