<オープン戦:中日0-3日本ハム>◇10日◇岐阜

 統一球の申し子が開幕ローテに名乗りを上げた。中日の3年目岩田慎司投手(24)が、日本ハムとのオープン戦に初先発。地元岐阜出身の右腕は8回5安打3失点と試合を作った。昨オフは2カ月間もベネズエラに派遣され、米国製のいわゆる「滑るボール」を体感。今季から導入された統一球もまったく問題なしだ。

 慣れ親しんだ球場で3年目右腕がテンポよく打者を料理した。岩田は1回を簡単に3人で片付けると序盤からエンジン全開。打者の手元で動くカット系の変化球を駆使しゴロを積み上げた。6回には糸井に2ランを浴びたが、終わってみれば8回を投げ5イニングが3者凡退。持ち味を存分に見せつける内容で球数は98球。開幕ローテ入りをアピールする内容だった。

 「長いイニングを投げられたことは良かったけど、点を取られたことは反省。低めに投げて少し(ボールを)動かしてゴロを打たせるというのが僕のピッチング。そういう意味では良かった」。

 周囲からの期待は大きい。昨年はプロ初勝利を含む1勝1敗、防御率2・61ながらプロ野球記録5試合連続完封に貢献。高い潜在能力を持っていることは間違いない。ただ、それ以上に首脳陣は岩田の「経験」に大きな期待を寄せているのだ。

 昨年9月、岩田は優勝が決定する直前にチームから離れ、ベネズエラのウインター・リーグ「マガジャネス」に派遣された。そこから始まった2カ月にも及ぶ武者修行。そこで使用されていたボールが、統一球に近い米国製の「滑るボール」だった。

 1試合80球の制限があり勝ち星こそ1勝だったが、ファン投票によるもっとも優秀な投手にも選出された。地元メディアからの取材も殺到。同行した住田コンディショニングコーチが制限をかけるほどの人気だった。

 「思ったよりも(ボールは)気にならなかった。大学時代の国際大会とかで投げてるんで。そんな繊細なタイプではないんで大丈夫です(笑い)」。

 今後も実戦でマウンドを重ねる見込み。激烈な開幕ローテ争いはまだまだ続きそうだ。

 「自分では去年よりも良くなっていると思います。周りのことは気にせず開幕までベストコンディションを作っていきたい」。

 環境や条件を苦にせず、自分の味方にしてしまう頼もしさ。開幕ローテ入りに向けて背番号28が突き進む。【桝井聡】