<巨人1-4オリックス>◇23日◇東京ドーム

 オリックス寺原隼人投手(27)が12度目の挑戦で巨人戦の先発初勝利を挙げた。1-1の7回終了時に岡田監督から完投指令を受けて発奮。9回2死の打席にも代打はなく、自ら粘って四球を引き出すと山崎浩の決勝3ランが飛び出した。9回7安打1失点完投で3勝目。チームは今季2度目の連勝と、得意の交流戦で上昇ムードだ。

 体に残された力を絞りだすワインドアップから最後に選んだのは直球だった。9回2死。代打谷を外角146キロで見逃し三振。恥をかき続けた巨人戦のマウンドだけにもっと素直に喜びたかったが、両腕を横に広げるのがやっとだった。

 寺原

 最後は渾身(こんしん)の力で投げました。疲れました。巨人戦で勝つというのはプロに入ってから1つの目標でした。セ・リーグでは達成できなかったけど、パ・リーグに戻ってきて勝てて良かった。

 9回1失点完投。文句のない内容で、横浜時代から先発で巨人11連敗の過去と決別した。初回に1失点も動じない。連打を許さない。4回に味方が同点とし、気合も乗った。5回2死二塁、坂本から空振り三振を奪うと珍しく叫んだ。

 7回を終え、岡田監督から「1人で行くぞ」と声がかかった。完投指令に燃えた。初めて先頭打者を出した8回も「集中できた」と冷静だった。2死二塁で先制打を浴びた阿部を敬遠気味の四球で歩かせると、勝負した長野を狙い通り三振に仕留めた。

 この時点で120球に達したが、勝利への執念にベンチも9回2死走者なしで寺原に代打は出さなかった。バットを握った完投への“ファイティングポーズ”に球場はどよめいた。

 「とにかく塁に出るつもりでした。2アウトでも、投手でも、バット持ってますから。投手が出れば、雰囲気的に僕も嫌ですしね」。追い込まれて3球ファウルで粘り、越智から四球を引き出した。すると最後は山崎浩の決勝3ラン。これには岡田監督も「バッティング悪くないし、結果的にあの四球が効いた」としてやったりの顔だった。

 寺原の今季3勝目で、チームは今季2度目の連勝を飾った。パ・リーグでは最下位に沈んでいるオリックスが昨年に続き、交流戦で順位表のてっぺんを意味する「アレ」へ向けてじわじわと浮上してきた。【押谷謙爾】