<オリックス0-3西武>◇29日◇京セラドーム大阪

 無意識に、信じられないような打撃をしていた。6回2死一塁、外角直球を西武中島裕之内野手(28)が体重を後ろに残したまま、強引にバットを振り抜く。近いポイントでとらえた打球は、切れることなく右翼席へ一直線。「何であれがホームランに?」。マウンドで首をひねったオリックス中山の表情はそう言いたげだった。

 メジャーリーガー顔負けの10号決勝2ランだ。中島が右方向に大きな当たりを打った時、そのままの勢いで一塁側へ歩き出すようなフィニッシュになる。しかしこの打席、重心は完全に残っていた。「そう?

 全然意識してなかった」。天才肌の打者らしくニッコリ笑った。

 野性的で力強い打撃は日々の“予行演習”のたまものだ。交流戦後の全体練習でのこと。打撃練習中に、普段よりヘッドを立てたバットを短く持ち、フルスイングする中島がいた。「バリー・ボンズを意識してみたんや」。他にもマリナーズ・イチローら名だたる打者からインスピレーションを得て、自分なりにモノマネをし、実際に試合でも試したことがあるという。遊び心にあふれた柔軟な思考。それが引き出しの多さとなり、安定した成績を残し続ける秘訣(ひけつ)にもなっている。

 本塁打数を8年連続で2ケタに乗せ、打点もリーグトップの43。交流戦後に限れば打率4割4分と復調気配で、昨季まで5年連続で打っている打率3割復帰も近い。進化を続ける豪快な打撃を携えて、数字もようやく中島らしくなってきた。【亀山泰宏】