<広島2-1阪神>◇29日◇福井

 え~っ、ここで併殺?

 阪神新井貴浩内野手(34)が初回の絶好機を今季9個目の併殺打でつぶした。広島先発バリントンを勢いづかせ完敗。7回に右犠飛で唯一の得点をたたき出したが、届かなかった。試合後は、現状を「底」と猛反省。頼りにしとんやから、はよ底を脱して打ちまくってや!

 絶好のチャンスは、一瞬にしてついえた。初回1死一、三塁。不安定な立ち上がりだったバリントンに対し、新井が打席に入った。4番の1本で主導権をがっちり握る-。しかし2ボール1ストライクから動く直球をたたいて、三ゴロ併殺。最悪の結果に、黄色く染まった三塁側スタンドは失望のため息に包まれた。

 新井貴

 初回、初回。(今の状態は)底。

 帰りの通路で、新井はシンプルな言葉で言った。

 併殺打は、12球団で3番目に多い9個目となった。不動の4番は、リーグ再開後の5試合で19打数1安打2打点、打率0割5分3厘。2点ビハインドの7回無死三塁では右犠飛で反撃打点を挙げたが、初回のチャンスとは意味合いが異なる。波に乗ってきたチームの中で、「底」という4番が乗り遅れている状態だ。

 先制機を逃した打線は、5回まで3併殺でバリントンを助けた。独特の動く直球にほんろうされ、結局8回1失点に抑えられた。

 和田打撃コーチ

 あの序盤のチャンスで流れを持ってこられなかったのが響いた。4回以降は明らかに球がよくなっていたからね。

 4番の不振脱出に向けて、指揮官も動く構えだ。

 真弓監督

 良くなったと思っていたけど、ちょっと昨日あたりから全然タイミングが合っていなかった。どこか修正しないといけない。タイミングだろう。ボールが見えていない。ボール球に手を出してしまう。

 真弓監督は今月に入って、新井貴に直接指導を行っている。「ボールが見えるようになったら心配がいらない」と方向性を示した。

 決定打を欠き借金6に逆戻り。試合後は酔客2人がグラウンドに乱入するひと幕もあった。取り押さえた警備員によれば「すみません」と素直に謝罪したというが、ファンにとってもやもやが残る試合となった。

 試合前のベンチ裏。沼沢球団本部長が選手を集めてミーティングを行った。急死した渡辺チーフスコアラーの家族の言葉をナインに伝えた。「一緒に戦ってきて志半ばになってしまったけど、皆さんには最後まで頑張って戦ってほしい」。どん底の4番がはい上がった時こそが、猛虎の覚醒になる。【益田一弘】