<イースタン・リーグ:楽天8-3横浜>◇5日◇Kスタ宮城

 杜(もり)の都にエースが帰ってきた。右肩腱板(けんばん)痛で2軍調整中の楽天岩隈久志投手(30)が実戦復帰した。イースタン・リーグ横浜戦に先発。5月17日以来となるマウンドで、3回を3安打2四球も無失点に抑えた。最速145キロで毎回の計3奪三振。次回登板は未定だが、球宴前の1軍復帰が見えてきた。

 最後にピンチを迎えても、岩隈は動じなかった。3回、2死から2四球と安打で満塁を招くとギアが上がった。井手への初球、アウトローのスライダーで見逃しストライク。2球目、低めフォークで空振り。あっさり追い込むと、3球勝負に打って出た。低めに制御したフォークを振らせた。走者を出しても点だけは与えない。圧倒的な力量で敵をねじ伏せた。

 合計48球を投げ終え、笑みがこぼれた。「まあまあです。なんとか試合をつくることはできたし、全球種を試すこともできました」。抑える、抑えないの結果で判断される立場にはないが、1カ月半ぶりの実戦。さすがに「いろいろと不安はありました」。自らの右腕で、その不安を拭い去った。

 2回、3回とスライダーがやや高めに浮く場面もあったが、得点圏に走者を背負えば低めに修正。最速145キロの直球も球威十分だった。2四球も、総じてストライクを取るのに苦労しなかった。「試合をつくれたことが良かった」と、同じ言葉を繰り返した。

 ダイヤモンドの真ん中から見る1カ月半ぶりの風景に、気持ちも高まった。日差しの照り返しが厳しい泉の2軍練習場で黙々と走った。熱気ムンムンの室内練習場で投げた。そんな日々だった。「それを思えば前進だと思います」。観客こそ1000人あまりだったが、慣れ親しんだ本拠地のマウンドが心地よかった。

 次回登板については「まだ分かりません。明日の状態を見ながらですね」と慎重も、表情は明るかった。永井が抹消され、先発ローテのやりくりは苦しい。星野仙一監督(64)は「ヨシ(佐藤投手コーチ)が決めるから分からないが、万全な状態で上がってきてもらいたい」としたが、1軍復帰の舞台は確実に近づいている。【古川真弥】