<日本ハム3-1楽天>◇20日◇東京ドーム

 09年以来となった注目の「ダルマー対決」を制したのは、日本ハム・ダルビッシュ有投手(24)だった。9回を4安打1失点で、両リーグ通じて最多の13勝目を挙げた。2回に先制を許したが、3回以降は1安打に抑え込むなど逆にエンジン全開となった。チームがちょうど半分の72試合での13勝。08年の楽天岩隈以来の20勝が視界に入ってきた。

 背中を追ってくる後輩に威厳を見せた。ダルビッシュが今季パ・リーグ右腕の頂上決戦の覇者になった。本拠地を北海道に移転後、主催試合で最多4万4826人が詰め掛け、2万2563人だった前日19日のほぼ2倍の観客を魅了した。9回完投でハーラー1人旅の13勝目。プライドをかけた投げ合いを制し、白星を積み上げた。「意識?

 特にない」と言いながら、敗者へ敬意を払った。マー君をたたえ、ライバルの垣根を越えた優しいアドバイスを送った。

 ダルビッシュ

 (田中は)すごく直球もいいし、コントロールもいい。あとは身体能力をちょっと…。

 磨き上げた剛腕の土台にある感性が、命綱になった。1回の40球の内訳は29球が速球とツーシーム、カットボールの直球系。手探りの2回に3安打を集中され、1点の先制点を献上。すべてその直球系をとらえられた。通常の直球である「フォーシームが良くなってきている」。打者の反応から「左打者が(タイミングが)合っていない」との感触を得て、3回以降はツーシームを排除する変わり身を決行した。梨田監督が「あのリードをちゃんと守りきる。さすがダルビッシュという内容」とうなるように、会心の前半戦締めへつなげた。

 破竹の進撃が続く1年。田中へ助言できるのも、探求心旺盛に進化を遂げてきた自らの経験則に基づく。09年オフにスピードスケート金メダリスト清水宏保氏と偶然、ウエートトレを共にした。張り詰めた空気感に触れ、多少の言葉を交わしたという。周囲に「世界一になっている人ですからね」と話し、じっとストイックな姿を目に焼き付けていたという。

 極度の人見知りだが、アスリートとの出会いにだけは積極的。規格外の投手像を築くため、時に刺激を注入する。この日は親交ある男子アルペンスキー第一人者の皆川賢太郎、女子モーグルの愛子夫人(旧姓上村)が観戦。今も一緒にトレーニングし、食事する仲。ただでさえ突出した感性を磨く陰の努力も常に怠らず、第一線で生き抜く活路を切り開いてきた。今季、踏み切った肉体改造の理由も「毎年、一緒でもおもしろくないでしょ」とシンプルそのものだ。この日の説得力十分のパフォーマンスと短い言葉-。ダルビッシュから、高いステージで出会った盟友・田中へのメッセージだった。【高山通史】