<ソフトバンク4-1日本ハム>◇29日◇福岡ヤフードーム

 日本ハムがソフトバンクとの首位攻防3連戦の初戦を落とした。初回に4番中田翔内野手(22)の右翼越え適時二塁打で幸先よく先制したが、3回に失策から招いたピンチに先発ボビー・ケッペル投手(29)が川崎に適時打、本多に犠飛を許し2失点。終盤も追加点を奪われ、打線も2回以降は沈黙した。首位とのゲーム差は1・5に開いたが、今日30日はエース・ダルビッシュ有投手(24)で巻き返す。

 まとわりつくような湿気が、疲労感を倍増させた。梨田昌孝監督(57)は激戦を終えたロッカー室から姿を現すと開口一番、「暑いなぁ」と漏らした。節電の影響で、蒸し風呂のような熱気で満ちた真っ暗な通路。後ろ髪をひかれる敗戦の弁で、打ちあぐねた相手先発の山田を立てた。「いいとは思わなかったけれど、やられたら、いいということでしょう」。敗軍の将は1・5差へ広がった痛恨の黒星を、少し強がりながら悔いた。

 完璧な白星への突破口は開けたが、自滅した。1回2死から糸井が快足を飛ばして遊撃への内野安打。名手・川崎の失策を誘い、2死二塁の先制チャンスへと早変わりした。中田が低め直球を流し打ち、右翼線への適時二塁打。チーム・モットーの全力疾走でミスに付け込み、主導権を奪った。「伸びたというより打球が切れた」。強引さを捨ててチーム打撃に徹した22歳の主砲が、天王山3連戦の最高の幕開けを演出した。

 試合前のチーム宿舎で、いつも通りにミーティングを徹底した山田を攻略する足掛かりは一瞬で、吹き飛んだ。3回に先頭打者の多村のゴロを、名手・金子誠が失策。逆シングルで捕球態勢に入り、ファンブルした。先発ケッペルが犠打狙いの長谷川を警戒して3ボール1ストライク。打者有利のカウントとし、バスターエンドランに切り替えられて傷口を広げ、一挙2失点で逆転を許した。

 先行逃げ切りの必勝パターンを手放し、投手交代など後手に回る展開。中田も得点圏2度を含む、ほか3打席で走者を置きながら、気負いは空回りした。「チャンスで打てる時ばかりじゃない」と言い聞かせるように話したが、表情は険しい。洗練された生命線の走攻守と戦略が、この日は機能せず。個の能力に秀でるソフトバンクに屈するモデルケースの大一番を教訓にした出直しが、反攻の必須条件になる。【高山通史】