<ソフトバンク3-2日本ハム>◇30日◇福岡ヤフードーム

 鮮やかなダル撃ちだ。ソフトバンク小久保裕紀内野手(39)が、日本ハムのダルビッシュ有投手(24)から、チーム全得点となる3打点を挙げて攻略した。初回に同点打を放つと、8回には決勝の2点適時打。勝負強い打撃で、パ相手に9連勝中だった球界のエース右腕を陥落させた。

 クライマックスは8回に待っていた。主将小久保がダル撃ちの全3打点だ。初回は1死一、三塁で、同点に追いつく右ゴロ。ただ、それだけでは終わらない。8回1死一、二塁で打席が巡ってきた。

 パ球団に4月12日の開幕戦以来、陥落していなかったダルビッシュを倒すべく、鷹の4番に「追い風」が吹いた。初球スライダーがワンバウンドとなり、走者がそれぞれ進塁。昨季対戦打率も3割1分6厘(19打数6安打)とダルキラーのスラッガーが、絶好のチャンスを逃すはずもない。次球、ダルビッシュの141球目、外角直球を中前の2点適時打だ。

 「二、三塁になって正直、すごく楽になった。ゲッツーがなくなったので、速い球を利用して、軽打しようと思えた。ファウルせず、1球で仕留められた」

 多くの思いを背負って打った。8回の先頭打者川崎には「絶対に出ますから」と伝えられていた。この日、後半戦で初めてDHに入ったため、前夜アーチを放ったオーティズが控えに回っていた。決勝打の直前にダルビッシュのワンバウンド暴投を引き出したのも、それまでナインが139球を投げさせたから。さらに、エース杉内の力投…。球宴で裏方、スタッフの移動や食事まで気遣う男が、燃えないわけがない。

 「(杉内)俊哉のピッチングがすごかった。今日は首脳陣の配慮で自分がDHに入ったことで、ホセが昨日本塁打打ったのに出られなかった。そういうのはありましたね」

 プロ18年目で、ようやく慣れたというDH起用。だが、変わらぬものがある。

 「あんな球、なかなか経験できない。打席で楽しむというのはないけど、試合前とかの気持ちは(対ダルだと)やっぱり違う。楽しみですよ」

 好投手を打ち崩すことを最高の喜びに、バットを振り続けてきた。次のターゲットは難敵武田勝。今日31日も熱い思いを胸に、打席へ立つ。【松井周治】