<ソフトバンク4-0日本ハム>◇16日◇福岡ヤフードーム

 佑ちゃんが勝てない。日本ハム斎藤佑樹投手(23)が5敗目を喫した。ソフトバンクとの直接対決3連戦の初戦を任されたが、制球が定まらず苦しい投球。初回に先制され、2回も2四球に2安打で2点を失った。その後は立ち直ったものの、序盤の失点が響き、5回8安打4失点で自身3連敗。優勝争い、そしてクライマックス・シリーズ(CS)でも対戦する可能性があるライバル相手に結果を残せず、今後に不安を残した。今日17日の第2ラウンドの結果次第でマジック点灯を許す、厳しい状況に追い込まれた。

 斎藤が決め球を打たれた。1回、内川の先制適時打。5回、松田の適時二塁打。ともに追い込んでから打たれた。この日に浴びた8安打のうち5本は追い込んでからのものだった。5回4失点で自身3連敗。首位ソフトバンクとの天王山初戦を落とす痛い1敗だった。試合後、斎藤は「追い込んだ後のボールが甘い。ウイニングショットを身につけないと」と力不足を実感するように、課題を口にした。

 心に期するものがあった。「緊張はしてなかったですが、意気込みはいつも以上に強かった」。首位決戦というだけではなく、前日15日に梨田監督の勇退が発表された。退任会見で口にした「まだ日本一になっていないので、日本一を取るということをみんなでやっていきたい」という思いは、斎藤の胸にも響いた。梨田監督のためにも結果を残したい。「それはもちろんありました」。ブルペンでの調子は悪くなかったが、試合では制球が定まらなかった。いつも以上の気合が空回りした。

 ソフトバンクに勝てない。この日に勝利すれば、球団の新人では90年酒井以来、21年ぶりとなるパ全球団からの白星だった。5月8日の初対戦では故障降板。8月14日は5回2/3を2失点でしのぐも勝敗はつかなかった。優勝争いのライバル。さらにCSでも対戦する可能性が高い。日本一への道のりで、どうしても倒さなければならない相手だ。ローテ通りならば公式戦の登板は残り4試合。「粘り強さがありました」と印象を口にしたソフトバンクとの対戦は1試合になる見込み。シーズン中にリベンジしなければ、CS登板に影響が出る可能性もある。

 ただ、梨田監督は、いつも通りに斎藤を責めなかった。「今日は良い状態で、ブルペンから臨めた感じがあった。援護できなかったね、全然」。2月の春季キャンプから先発で起用する方針を貫いてきた。この起用法を疑問視する声もあったが「ピッチングを知っている」、「戦力になる」と常々言い続けてきた。それは注目ルーキーにとって何より力になった。

 この日、5回で交代を告げられた後も、梨田監督から声をかけられた。「調子はよく見えたし、次はがんばってくれ」。この日は結果という形でこたえられず、痛い1敗を喫した。だが、まだチャンスは十分に残る。優勝争い、そしてCS、日本シリーズ。高校時代の甲子園や大学時代に見せた勝負強さを発揮して恩返ししたい。【木下大輔】