日本人左腕最速の155キロを誇るヤクルト石井弘寿投手(34)が今季限りでの現役引退を決意したことが28日、分かった。左肩の故障などで5年間にも及ぶリハビリを行ってきたが、1軍復帰はならなかった。お世話になった関係者へのあいさつを始めており、近日中に球団から発表される。

 2軍の本拠地最終戦となった24日の横浜戦(戸田)では8回に2番手として登板。打者3人に対し8球を投げ、見逃し三振を含む3者凡退で切り抜け、拍手を浴びた。打者1人の予定だったが、伊東投手コーチの計らいもあって1イニングに延長。家族を呼んでの登板だった。最速は134キロ。マウンドを降りる際には、さすがに寂しそうな表情も見せていた。

 今季は1軍で勝利に貢献したいシーズンだった。小川監督は入団時の担当スカウトで、正捕手の相川は東京学館の先輩。リハビリ中には「これだけ長くリハビリをさせてもらって球団には感謝している。1軍で貢献するのが恩返しだと思う」と話していたが、そこまでの状態には戻らなかった。ただ、ヤクルトへの感謝の気持ちは強く、他球団へ移籍して現役にこだわる道を選ぼうとはしなかった。

 現在の1軍では3年目赤川や、新人として球団の連続無失点の記録をつくった久古らの若手左腕が台頭してきたことも引退決断の引き金になった。「いい若手が出てきましたよね」。155キロの速球とスライダーで他球団をきりきり舞いさせた左腕は、役目を引き継ぐかのように、静かに気持ちを固めた。

 ◆石井弘寿(いしい・ひろとし)1977年(昭52)9月14日、千葉県市原市生まれ。95年ドラフト4位でヤクルトに入団。通算成績は338試合に登板し27勝15敗55セーブ。02年には左腕としては最速の155キロを記録するなど、最優秀中継ぎ投手に選ばれた。04年にはアテネ五輪代表として銅メダルを獲得。06年WBCは左肩痛のため1次リーグで離脱した。打撃センスも非凡で、2軍監督だった若松勉氏から打者転向を打診されたこともあった。180センチ、100キロ。左投げ左打ち。