<ヤクルト7-4阪神>◇29日◇神宮

 野球の神様はなぜ、虎をいじめるのか…。守護神藤川球児投手(31)が締めて、久々の勝利のハイタッチを思い描いていたのに、8回にまさかの暗転。エース能見篤史投手(32)が踏ん張れず、逆転負けした。神宮で6連敗。東都の虎党から3夜続けて厳しいヤジを浴びせられ、屈辱にまみれた傷心の虎。今日から戻る我が家・甲子園で最後の意地を見せてくれ。

 3夜続けて、指揮官は罵声の中を歩いた。「何やってるんだ!」「辞めろ!」。三塁側フェンス越しに立ち上がったファンで、スタンドは騒然とした。後方にはメガホンも飛んだ。ブーイングも浴びた。帰りのバスが出発しても、怒号は収まらなかった。虎党の悲しい叫びが胸に痛い。誰がこんな悲劇を予想できただろうか。まさかの逆転負け3連発…。魔の神宮で、これでもかというほどに虎は屈辱にまみれた。

 運命の分かれ道となった8回裏の決断。これが凶と出て、悪夢の同一カード3連敗。借金は「5」に増えた。勝利が遠い。「なかなかなあ…」。ため息を混じらせ、試合後の第一声を吐いた。

 1点リードで迎えた8回裏。マウンドには能見がいた。初回に先制3ランを浴びたが、2回以降は立ち直った。7回まで許したヒットは3本だけ。首脳陣は藤川につなぐまでの1イニングを左腕に託した。しかし先頭の代打川島慶に四球を出し、3番川端に右翼線に逆転二塁打を許した。「何とか気持ちで投げようと思った。気持ちを出していったんだけどな」。能見はそうつぶやいた。この日もリードを守れなかった。

 試合後の監督会見では、8回の藤川投入に質問が相次いだ。10日間も出番のない守護神の起用で流れを渡さないという選択肢もあったはずだ。

 ─8回に藤川の投入は

 真弓監督

 ないです。

 ─イニングまたぎは

 真弓監督

 しない。

 ─畠山の打席で代える考えは

 真弓監督

 9回だ。

 ─ひっくり返されるまで、能見に任せるつもりだったのか

 真弓監督

 ひっくり返されるなんて、思っていない。はじめから…。

 真弓監督は8回投入を完全に否定した。開幕投手を任せた能見の投球に、かけた形となった。実際に、藤川が投球練習を始めたのは、8回裏の開始から。その藤川はこう話した。

 「オレがいっても流れが変わったかは分からない。能見さんはチームのエースだから、間違っていない。残念としかいいようがない」

 ベンチの決断を静かに受け入れた。

 すべて逆転負けで、首位との勢いを見せつけられた3日間。選んだ道がすべて負の方向につながっていたかのようだ。それも現実として受け止めるしかない。CS出場を争う3位巨人が負けた夜、60敗目を喫して差を詰められなかった。残り23試合。ペナントレースの終了が近づいてきた。今日から本拠地の甲子園に戻る。もう最後の意地を見せるしかない。虎の牙はまだ折れていないはずだ。【田口真一郎】