<セCSファーストステージ:ヤクルト3-2巨人>◇第1戦◇29日◇神宮

 ヤクルトが2人の“先発投手”の快投で王手をかけた。セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが開幕した。ヤクルト先発の館山昌平投手(30)は5回1失点と好投し、6回からはプロ初の中継ぎ登板の村中恭兵投手(24)が3回2/3を2安打1失点。小川淳司監督(54)の執念の采配が逆転勝利を呼び込んだ。初のCS本拠地開催の初戦を制し、今日30日の第2戦は引き分け以上で、中日とのCSファイナルステージ(11月2日~、ナゴヤドーム)に初進出する。

 本拠地神宮を埋めたヤクルトファンの声援を受けて、村中がプロ初の中継ぎマウンドに走りだした。「ブルペンから見るのは初めて。あんなにお客さんがいて幸せでした」。2点を勝ち越した直後の7回。3者凡退に打ち取り、流れは渡さない。8回2死、小笠原を空振り三振に打ち取ると、クールな男が派手にほえた。

 小川監督の執念の采配だった。CSに向けた練習時、「(ファイナルステージの)中日戦の先発は考えない。全員で勝ちにいく」と宣言。巨人とのファーストステージにすべてをかけた。先発館山は5回1失点と好投したが、1点を追う5回2死一、二塁で迷わず代打を送った。代打藤本が同点適時打を放ち、采配に結果で応えた。

 一戦必勝。そのために投手起用には、徹底した情報戦線を敷いた。27、28日の2日間は初めて投手陣の練習を非公開とした。室内練習場は立ち入り禁止。ブルペンでの投球、ダッシュの本数…すべてを隠した。巨大戦力に立ち向かうため、荒木チーフ兼投手コーチは「限られたメンバーの中で、いい投手を使っていく」と戦略を練った。物々しい雰囲気の中、石川、館山、村中、赤川の4人が全く同じ行動を取ってかく乱。練習日の昼食は、そろってチャーハンを食べる念の入れよう。その答えが、館山、村中の「ダブル先発」による継投だった。

 村中は49球を直球とフォークだけで、巨人打線を抑えた。6年目の今季は新球チェンジアップで投球の幅を広げたが、9月14日からの5試合はいずれも勝利がつかず4勝に終わった。左肩痛で離脱もあった。本来の魅力はダイナミックな投球。小川監督は「せっかくいいものを持っている。楽するのは年を取ってからでいいんです」と叱咤(しった)激励を続けた。

 2勝で勝ち抜く短期決戦で、初戦を取った意味は大きい。試合前、ベンチ裏で声出し役の森岡が叫んだ。「名古屋行きをかけた、巨人とのケンカです。行きましょう!」。レギュラーシーズンで、中日に最大10ゲーム差を逆転された悔しさは忘れない。小川監督は「今日のゲームは最高です。点の取り方も、守りも良かった」と言った。目先の1勝にとことんこだわり、ファイナル進出に王手をかけた。【前田祐輔】